【初期研修医必読】新専門医制度の基本領域19学会の専門医取得までの研修期間・取得条件一覧

初期研修が終わると、多くの医師は「専攻医」として専門研修に進みます。

ただ、専門医制度は少しわかりにくいです。

「内科は何年?」
「整形外科は何年?」
「皮膚科は長いって本当?」
「専門医を取るには、研修するだけでいいの?」

このあたりは、初期研修医のうちに一度整理しておいた方がいいです。

新専門医制度では、まず19の「基本領域」から1つを選び、専門研修プログラムに所属します。研修期間は領域によって異なり、おおむね3〜5年です。研修修了後、各領域の認定試験に合格することで専門医を名乗ることができます。日本専門医機構も、2年間の初期臨床研修後に基本領域を決め、3〜5年間の専門研修を行い、専門医試験に進む流れを示しています。(日本専門医機構)

この記事では、初期研修医向けに、基本領域19学会の専門医取得までの研修期間と主な取得条件を一覧でまとめます。

※制度は年度ごとに変更されることがあります。実際に応募する際は、必ず各学会・各プログラムの最新募集要項を確認してください。


目次

新専門医制度とは?

新専門医制度は、2018年から本格的に始まった専門医養成制度です。

従来は各学会が独自に専門医制度を運用していましたが、新専門医制度では日本専門医機構が関与し、専門医の質を一定水準に保つことを目的としています。

大まかな流れは以下の通りです。

医学部卒業
↓
医師国家試験合格
↓
初期臨床研修 2年間
↓
基本領域19領域から1つを選択
↓
専門研修 3〜5年間
↓
専門医試験
↓
基本領域専門医
↓
必要に応じてサブスペシャルティ専門医へ

専門医は取得して終わりではなく、原則として5年ごとの更新があります。日本専門医機構も、専門医には更新基準があり、専門研修修了後に領域ごとの認定試験に合格した医師が専門医を名乗れると説明しています。(日本専門医機構)


基本領域19領域とは?

新専門医制度の基本領域は、以下の19領域です。

  • 内科
  • 小児科
  • 皮膚科
  • 精神科
  • 外科
  • 整形外科
  • 産婦人科
  • 眼科
  • 耳鼻咽喉科
  • 泌尿器科
  • 脳神経外科
  • 放射線科
  • 麻酔科
  • 病理
  • 臨床検査
  • 救急科
  • 形成外科
  • リハビリテーション科
  • 総合診療科

日本専門医機構および関連情報でも、基本領域はこの19領域とされています。(MEC Station(メックステーション))


基本領域19学会|専門医取得までの研修期間・取得条件一覧

以下は、初期研修医が進路選択をするうえで見やすいように整理した一覧です。

基本領域主な学会専門研修期間の目安主な取得条件・特徴
内科日本内科学会3年J-OSLERで症例登録。内科全般を幅広く研修。病歴要約、CPC、JMECC、学会発表・論文などが重要。
小児科日本小児科学会3年新生児、小児救急、外来、健診、発達、慢性疾患など小児全般を研修。
皮膚科日本皮膚科学会5年皮膚疾患全般、外来診療、皮膚病理、手術、レーザー、アレルギー、腫瘍などを研修。
精神科日本精神神経学会3年気分障害、統合失調症、認知症、児童思春期、依存症、精神科救急などを研修。精神保健指定医との関係も重要。
外科日本外科学会3年消化器、心臓血管、呼吸器、小児、乳腺、内分泌など外科系の基礎を研修。NCD登録、手術経験、学術活動が重要。
整形外科日本整形外科学会3年9か月〜4年運動器全般を研修。手術160例以上、うち術者80例以上、教育研修会30単位、地域医療研修、学会発表または論文などが必要。
産婦人科日本産科婦人科学会3年周産期、婦人科腫瘍、生殖内分泌、女性ヘルスケア、手術、分娩管理などを研修。
眼科日本眼科学会4年白内障、緑内障、網膜硝子体、角膜、ぶどう膜、小児眼科、眼科手術などを研修。
耳鼻咽喉科日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会4年耳、鼻、副鼻腔、咽喉頭、頭頸部腫瘍、めまい、嚥下、音声、手術などを研修。
泌尿器科日本泌尿器科学会4年腎・尿路・前立腺・男性生殖器、尿路結石、悪性腫瘍、排尿障害、手術を研修。
脳神経外科日本脳神経外科学会4年脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷、脊髄、機能的脳外科、小児脳外科などを研修。
放射線科日本医学放射線学会3年画像診断、IVR、放射線治療の基礎を研修。その後、診断専門医・治療専門医などへ進む。
麻酔科日本麻酔科学会4年手術麻酔、集中治療、ペイン、救急、周術期管理を研修。麻酔症例数の蓄積が重要。
病理日本病理学会3年病理解剖、組織診、細胞診、術中迅速診断、剖検、CPCなどを研修。
臨床検査日本臨床検査医学会3年検体検査、生理検査、感染症、輸血、精度管理、検査診断学などを研修。
救急科日本救急医学会3年ER、外傷、中毒、集中治療、災害医療、重症患者管理などを研修。
形成外科日本形成外科学会4年外傷、先天異常、腫瘍再建、瘢痕・ケロイド、手外科、顔面骨、マイクロサージャリーなどを研修。
リハビリテーション科日本リハビリテーション医学会3年脳卒中、運動器、脊髄損傷、神経筋疾患、小児、内部障害、義肢装具などを研修。
総合診療科日本専門医機構 総合診療専門医検討委員会3年総合診療専門研修I・II、内科、小児科、救急科、地域医療などを研修。地域医療との関わりが強い。

研修期間だけで選ぶのは危険

表だけ見ると、

「3年で取れる科が楽そう」
「5年かかる皮膚科は大変そう」
「4年の科は少し長いな」

と思うかもしれません。

しかし、専門医取得の大変さは、研修期間だけでは決まりません。

むしろ重要なのは以下です。

・症例数
・手術数
・レポート
・病歴要約
・学会発表
・論文
・講習単位
・当直や救急対応
・医局人事
・サブスペシャルティとの接続
・将来の働き方

例えば整形外科では、3年9か月で45単位を修得する研修プロセスが示され、手術手技160例以上、そのうち術者80例以上、地域医療研修3か月以上、教育研修会30単位、学会発表または論文などが修了要件に含まれます。単に年数を過ごせば終わりではありません。

外科も同様に、3年間の専門研修の修了時に、日本外科学会会員であること、プログラム統括責任者から修了判定を得ること、診療経験・学術活動・共通講習などの修了要件を満たすことが求められます。(jssoc.or.jp)

つまり、専門医取得は「年数」ではなく「修了要件を満たせるか」が本質です。


初期研修医が専門科を選ぶときに見るべきポイント

1. 専門医取得までの年数

まずは現実的に、何年で専門医が取れるかを確認しましょう。

大まかには、

3年:内科、小児科、精神科、外科、産婦人科、放射線科、病理、臨床検査、救急科、リハビリ、総合診療など
4年前後:整形外科、眼科、耳鼻科、泌尿器科、脳外科、麻酔科、形成外科など
5年:皮膚科など

というイメージです。

ただし、実際にはプログラムの中断、産休・育休、留学、地域枠、義務年限、症例不足、試験不合格などで延長することがあります。


2. 症例・手術・レポートの重さ

専門医取得では、症例経験が非常に重要です。

内科ならJ-OSLER、外科ならNCD、整形外科なら手術経験や教育研修単位など、領域ごとに記録すべき内容が異なります。

内科専門研修では、J-OSLERを使った症例登録、病歴要約、CPC、JMECC、学会発表・論文などが修了要件に含まれます。(tsukuba-kinen.or.jp)

「その科が好きか」だけでなく、「その科の専門医要件を自分がこなせそうか」も見ておくべきです。


3. サブスペシャルティへのつながり

基本領域専門医は、サブスペシャルティ専門医への入口でもあります。

例えば内科専門医を取った後に、

  • 消化器内科
  • 循環器内科
  • 呼吸器内科
  • 糖尿病内科
  • 腎臓内科
  • 血液内科
  • 膠原病内科
  • 神経内科

などに進むイメージです。

外科なら、

  • 消化器外科
  • 心臓血管外科
  • 呼吸器外科
  • 乳腺外科
  • 小児外科

などがあります。

将来サブスペまで取るつもりなら、「基本領域+サブスペ」で何年かかるかまで考える必要があります。


4. 将来の働き方

専門科選びでは、専門医取得後の働き方も重要です。

例えば、

開業しやすい科
病院勤務中心の科
当直が多い科
手術が多い科
外来中心の科
女性医師が働きやすい科
自由診療と相性がいい科
地方でも需要が強い科
都市部で競争が激しい科

このあたりは科によってかなり違います。

専門医取得はゴールではなく、その後のキャリアの土台です。


19基本領域の特徴をざっくり解説

内科

内科は最も王道の基本領域です。

全身を診る力が身につき、サブスペシャルティも非常に多いです。将来の選択肢が広く、病院勤務、開業、在宅、産業医、健診、研究など幅広い進路があります。

一方で、J-OSLERの症例登録や病歴要約は負担が大きいです。


小児科

小児科は、子どもを総合的に診る専門科です。

急性疾患、慢性疾患、発達、予防接種、健診、虐待対応、家族支援など、医学だけでなく社会的視点も求められます。

地域需要は強い一方、夜間・救急対応が多い施設もあります。


皮膚科

皮膚科は外来中心で、視診能力が重要な科です。

皮膚炎、感染症、アレルギー、自己免疫疾患、皮膚腫瘍、美容皮膚科など幅広い領域があります。

専門研修期間は長めですが、将来的には開業や自由診療との相性がよい科です。


精神科

精神科は、こころと脳を扱う専門科です。

うつ病、双極性障害、統合失調症、不安症、発達障害、認知症、依存症、睡眠障害などを診ます。

精神科専門医に加えて、精神保健指定医の取得もキャリア上重要になります。


外科

外科は手術を中心に、急性期医療を支える基本領域です。

外科専門医は、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺外科などに進む土台になります。

手術経験、NCD登録、学術活動などが重要です。


整形外科

整形外科は、骨、関節、筋肉、神経など運動器を扱う専門科です。

外傷、関節、脊椎、スポーツ、手外科、リウマチ、リハビリなど範囲が広く、開業との相性も高いです。

専門医取得には手術経験や教育研修単位、地域医療研修、学会発表などが必要です。


産婦人科

産婦人科は、周産期、婦人科腫瘍、生殖医療、女性ヘルスケアを扱います。

分娩、手術、救急対応があり、責任は大きいですが、非常に専門性が高い領域です。


眼科

眼科は、外来診療と手術のバランスがある科です。

白内障、緑内障、網膜硝子体、角膜、ぶどう膜、小児眼科などがあります。

開業との相性も高く、専門性と収益性の両方を狙いやすい領域です。


耳鼻咽喉科

耳鼻科は、耳、鼻、喉、頭頸部を扱います。

めまい、難聴、副鼻腔炎、アレルギー、嚥下、音声、頭頸部腫瘍など範囲は広いです。

外来診療も手術もあり、開業にもつながりやすい科です。


泌尿器科

泌尿器科は、腎臓、尿路、前立腺、男性生殖器を扱います。

尿路結石、前立腺肥大、排尿障害、泌尿器がん、腎不全、男性不妊などがあります。

高齢化社会では需要が強い領域です。


脳神経外科

脳神経外科は、脳卒中、脳腫瘍、頭部外傷、脊髄疾患などを扱います。

急性期・救急・手術の比重が高く、ハードな科の代表格です。

その分、専門性は非常に高いです。


放射線科

放射線科は、画像診断、IVR、放射線治療を扱います。

全身の疾患に関わるため、幅広い医学知識が必要です。

将来的には診断専門医、放射線治療専門医などに分かれていきます。


麻酔科

麻酔科は、手術麻酔、集中治療、ペインクリニック、救急、周術期管理を担います。

手術室に欠かせない存在で、全身管理能力が身につきます。

病院勤務の需要が高く、フリーランス的な働き方とも相性があります。


病理

病理は、診断の最終判断を支える専門科です。

組織診、細胞診、術中迅速診断、病理解剖、CPCなどを担当します。

臨床医とは違う形で医療に深く関わる科です。


臨床検査

臨床検査は、検体検査、生理検査、感染症、輸血、精度管理などを扱います。

病院全体の診断精度を支える専門科です。

数は多くありませんが、検査医学に強い医師として独自性があります。


救急科

救急科は、救急外来、外傷、中毒、集中治療、災害医療などを扱います。

初期対応能力が高まり、全身を横断的に診る力がつきます。

忙しい一方で、臨床力を一気に鍛えられる科です。


形成外科

形成外科は、体表の変形、欠損、外傷、再建を扱います。

顔面外傷、熱傷、腫瘍切除後再建、先天異常、瘢痕、手外科、マイクロサージャリーなどがあります。

美容外科・美容医療とも接続しやすい基本領域です。


リハビリテーション科

リハビリ科は、機能回復と生活再建を支える専門科です。

脳卒中、運動器、脊髄損傷、神経筋疾患、小児、内部障害などを扱います。

高齢化社会では需要が増えやすい領域です。


総合診療科

総合診療科は、地域医療、家庭医療、病院総合診療を担う科です。

総合診療専門研修では、総合診療専門研修I・II、内科、小児科、救急科などを組み合わせて研修します。2025年度以降の研修開始者では、内科研修6か月以上、小児科3か月以上、救急科3か月以上などの要件が示されています。(一般社団法人日本専門医機構 総合診療専門医検討委員会)

地方医療、在宅、地域包括ケア、診断困難例への対応に関心がある人に向いています。


初期研修医におすすめの考え方

専門科選びで迷ったら、以下の5つで考えると整理しやすいです。

1. 自分が毎日やっても苦にならない診療は何か
2. 10年後もその科を続けていたいか
3. 専門医取得までの要件をこなせそうか
4. サブスペシャルティまで含めた年数に納得できるか
5. 将来の働き方と合っているか

特に大事なのは、最後の「将来の働き方」です。

専門医取得までの数年間だけでなく、その後30年近く続ける仕事として考える必要があります。


まとめ

新専門医制度では、初期研修修了後に19の基本領域から1つを選び、3〜5年の専門研修を行います。

専門医取得までの年数は、領域によって異なります。

3年:比較的短い
4年:標準〜やや長め
5年:長め

ただし、本当に重要なのは年数ではありません。

大事なのは、

症例数
手術数
レポート
講習単位
学会発表
論文
試験
将来の働き方

です。

専門医は、キャリアのゴールではなくスタート地点です。

初期研修医のうちに、各科の研修期間、取得条件、将来性を整理して、自分に合った専門領域を選びましょう。

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