宅建の権利関係を勉強していると、序盤で出てくるのが 制限行為能力者 です。
「未成年者」
「成年被後見人」
「被保佐人」
「被補助人」
このあたりの言葉が出てきますが、最初はかなり混乱しやすい分野です。
しかし、宅建試験で問われるポイントはある程度決まっています。
結論からいうと、制限行為能力者の問題では、
誰が単独で契約できるのか
誰の同意が必要なのか
同意なしでした契約は取り消せるのか
誰が代理できるのか
この4点を押さえればかなり解けるようになります。
この記事では、宅建試験に必要な範囲に絞って、未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人についてわかりやすく整理します。
制限行為能力者とは?
制限行為能力者とは、簡単にいうと、判断能力や年齢の関係で、単独で有効に契約をする能力が制限されている人のことです。
民法上、主な制限行為能力者は次の4種類です。
| 種類 | 保護される人 | サポートする人 |
|---|---|---|
| 未成年者 | 18歳未満の人 | 法定代理人、通常は親権者 |
| 成年被後見人 | 判断能力を欠く常況にある人 | 成年後見人 |
| 被保佐人 | 判断能力が著しく不十分な人 | 保佐人 |
| 被補助人 | 判断能力が不十分な人 | 補助人 |
現在の民法では、成年年齢は18歳です。2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。したがって、宅建試験上の未成年者は、原則として 18歳未満の人 です。
制限行為能力者制度の目的
制限行為能力者制度の目的は、本人を保護することです。
たとえば、判断能力が十分でない人が、高額な契約をしてしまったり、不利な条件で不動産を売却してしまったりすると、大きな損害を受ける可能性があります。
そこで民法は、一定の場合に、
契約に同意が必要
同意なしの契約を取り消せる
支援者が代理できる
という形で、本人を守っています。
つまり、制限行為能力者制度は、取引の相手方を守る制度ではなく、原則として 本人側を守る制度 です。
そのため、相手方から一方的に、
「相手が未成年者だったから契約を取り消したい」
ということは基本的にできません。
未成年者とは?
未成年者とは、18歳未満の人です。
未成年者が法律行為、つまり契約などをするには、原則として 法定代理人の同意 が必要です。
法定代理人とは、通常は親権者、つまり親です。親権者がいない場合などには、未成年後見人が法定代理人になることもあります。
民法5条では、未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意が必要であり、同意なしにした法律行為は取り消すことができるとされています。
未成年者の原則
未成年者の基本ルールは次のとおりです。
未成年者が法律行為をするには、原則として法定代理人の同意が必要。
同意なしにした法律行為は、取り消すことができる。
たとえば、17歳の人が親の同意なしに、
高額なスマホ契約をする
バイクを買う
賃貸借契約をする
不動産を買う
借金をする
といった場合、原則として後から取り消すことができます。
宅建では、不動産売買や賃貸借契約と絡めて出題されやすいです。
未成年者でも単独でできる行為
ただし、未成年者だからといって、すべての行為に親の同意が必要なわけではありません。
未成年者でも単独でできる行為があります。
宅建で重要なのは次の5つです。
1. 単に権利を得る行為
未成年者が一方的に得をするだけの行為は、単独でできます。
たとえば、
プレゼントをもらう
お年玉をもらう
借金を免除してもらう
といった行為です。
これらは未成年者に不利益がないため、法定代理人の同意は不要です。
ただし、注意点があります。
単なる贈与ではなく、負担付き贈与 の場合は別です。
たとえば、
「土地をあげる。ただし固定資産税や管理費は負担してね」
という場合、未成年者は権利を得るだけでなく、義務も負います。
この場合は、単に権利を得る行為とはいえないため、法定代理人の同意が必要になります。
2. 単に義務を免れる行為
未成年者が一方的に義務から解放されるだけの行為も、単独でできます。
たとえば、
借金を免除してもらう
損害賠償義務を免除してもらう
といった場合です。
これも未成年者に不利益がないため、単独で有効にできます。
3. 法定代理人が目的を定めて処分を許した財産
親が、
「この5万円は教材費として使っていいよ」
と目的を定めてお金を渡した場合、未成年者はその目的の範囲内で単独で使うことができます。
教材費として渡されたお金で教材を買うなら、未成年者単独で有効にできます。
しかし、教材費として渡されたお金で高額なゲーム機を買うなど、目的外に使った場合は、原則に戻って取り消しの問題が出てきます。
4. 法定代理人が目的を定めずに処分を許した財産
いわゆる お小遣い です。
親が、
「この1万円は自由に使っていいよ」
と目的を定めずに渡した場合、その範囲内で未成年者は自由に使えます。
この場合、親の同意を個別にもらわなくても、未成年者の行為は有効になります。
5. 許可された営業に関する行為
これも宅建でよく出ます。
未成年者が法定代理人から営業を許可された場合、その営業に関する行為については、成年者と同一の行為能力を持ちます。
たとえば、17歳の人が親から古着販売の営業を許された場合、その古着販売に必要な仕入れ、販売、店舗の賃貸借契約などは、原則として単独で有効にできます。
ただし、許可された営業の範囲外の行為は別です。
古着販売を許可されただけなのに、関係のない不動産投資をするような場合は、営業の範囲外なので、原則として法定代理人の同意が必要です。
未成年者が契約を取り消せない場合
未成年者の契約は、同意がなければ原則として取り消せます。
しかし、次のような場合は取り消せなくなります。
法定代理人の同意があった場合
親権者などの法定代理人が同意していた場合、未成年者であることを理由に取り消すことはできません。
たとえば、17歳の人が親の同意を得て賃貸借契約をした場合、その契約は有効です。
法定代理人が後から追認した場合
契約時には親の同意がなかったとしても、後から親が、
「その契約でよい」
と認めた場合は、契約が有効に確定します。
これを 追認 といいます。
追認されると、未成年者であることを理由に取り消すことはできなくなります。
未成年者本人が成年後に追認した場合
契約時は17歳で未成年者だったとしても、その後18歳になって成年者となり、本人が追認した場合も、契約は有効に確定します。
未成年者が詐術を用いた場合
これは宅建で非常に重要です。
未成年者が相手方に対して、
「私は18歳以上です」
「親の同意をもらっています」
などと積極的にだました場合、未成年者取消権を行使できなくなることがあります。
これを 詐術 といいます。
単に黙っていた、年齢を聞かれなかった、というだけでは、通常は詐術とまではいえません。
しかし、身分証を偽造したり、積極的に成人だと信じさせたりした場合には、詐術にあたる可能性があります。
宅建では、
未成年者が詐術を用いた場合、取り消せない
と覚えておきましょう。
成年後見・保佐・補助とは?
次に、成年後見制度です。
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分な人を保護・支援する制度です。
法定後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて、
後見
保佐
補助
の3種類があります。法務省も、法定後見制度を「後見・保佐・補助」の3類型として説明しています。
判断能力が低い順に並べると、次のようになります。
| 区分 | 本人 | 判断能力 | 保護の強さ |
|---|---|---|---|
| 後見 | 成年被後見人 | 判断能力を欠く常況 | 最も強い |
| 保佐 | 被保佐人 | 判断能力が著しく不十分 | 中程度 |
| 補助 | 被補助人 | 判断能力が不十分 | 比較的軽い |
覚え方は、
後見 > 保佐 > 補助
です。
後見が一番保護が強く、補助が一番軽い制度です。
成年被後見人と成年後見人
成年被後見人とは、精神上の障害などにより、判断能力を欠く常況にある人です。
かなり判断能力が低いため、法律上もっとも強く保護されます。
成年被後見人を支援する人が 成年後見人 です。
成年被後見人の行為は原則取り消せる
成年被後見人が単独でした法律行為は、原則として取り消すことができます。
たとえば、成年被後見人が単独で、
不動産を売る
高額な商品を買う
借金をする
保証人になる
といった行為をした場合、後から取り消すことができます。
日常生活に関する行為は取り消せない
ただし、成年被後見人であっても、日常生活に関する行為は取り消せません。
たとえば、
食料品を買う
衣料品を買う
日用品を買う
といった行為です。
法務省も、食料品や衣料品などの日用品の購入といった日常生活に関する行為については、同意や取消しの対象にならないと説明しています。
日用品の購入まで取り消せると、本人の日常生活が成り立たなくなってしまうためです。
成年後見人には代理権と取消権がある
成年後見人には、原則として 代理権 と 取消権 があります。
つまり、成年後見人は本人に代わって契約をしたり、本人が単独でした契約を取り消したりできます。
ただし、ここで重要なのが、成年後見人には原則として 同意権がない という点です。
成年被後見人は、判断能力を欠く常況にあるため、成年後見人が同意して本人の行為を有効にする、という仕組みにはなっていません。
宅建では、次のように覚えましょう。
成年後見人は、代理する。取り消す。
しかし、同意はしない。
被保佐人と保佐人
被保佐人とは、精神上の障害などにより、判断能力が著しく不十分な人です。
成年被後見人ほどではありませんが、重要な財産行為を単独で行うには不安がある人です。
この被保佐人を支援する人が 保佐人 です。
被保佐人は重要行為に保佐人の同意が必要
被保佐人は、日常的な買い物などは自分でできます。
しかし、重要な財産行為については、保佐人の同意が必要になります。
法務省も、保佐制度について、お金を借りる、保証人になる、不動産を売買するなど、法律で定められた一定の行為について保佐人の同意が必要になると説明しています。
宅建で特に重要なのは、次の行為です。
借金をする
保証人になる
不動産を売買する
相続放棄をする
遺産分割協議をする
新築・改築・増築・大修繕をする
一定期間を超える賃貸借をする
これらは、本人に大きな影響を与える可能性があるため、保佐人の同意が必要になります。
保佐人の同意なしにした行為は取り消せる
被保佐人が、保佐人の同意が必要な行為を、同意なしでした場合、その行為は取り消すことができます。
取消しができるのは、主に本人である被保佐人や保佐人です。
たとえば、被保佐人が保佐人の同意なしに不動産を売却した場合、その売買契約は取り消しの対象になります。
保佐人に当然に代理権はない
ここは宅建でよく狙われます。
保佐人には、民法上の重要行為について 同意権 と 取消権 があります。
しかし、保佐人に当然に 代理権 があるわけではありません。
保佐人が代理権を持つには、家庭裁判所の審判によって、特定の法律行為について代理権が付与される必要があります。法務省も、家庭裁判所の審判によって、特定の法律行為について保佐人に代理権を与えることができると説明しています。
宅建では、
保佐人は、同意する。取り消す。
代理は当然にはできない。
と覚えてください。
被補助人と補助人
被補助人とは、精神上の障害などにより、判断能力が不十分な人です。
被保佐人よりも判断能力は残っているため、補助制度は後見・保佐よりも軽い制度です。
この被補助人を支援する人が 補助人 です。
補助は本人の同意を重視する制度
補助制度は、本人の判断能力がある程度残っている人を支援する制度です。
そのため、補助開始の審判には、原則として本人の同意が必要です。
本人の自己決定を尊重しながら、必要な範囲で支援する制度と考えるとわかりやすいです。
補助人の権限は家庭裁判所が決めた範囲だけ
補助人には、当然に広い同意権・取消権・代理権があるわけではありません。
家庭裁判所が定めた特定の行為についてのみ、
同意権
取消権
代理権
が認められます。
つまり、補助人はすべての契約に口を出せるわけではありません。
宅建では、
補助人は、家庭裁判所が決めた範囲だけサポートする
と覚えるとよいです。
未成年者・成年後見・保佐・補助の比較表
ここまでをまとめると、次のようになります。
| 区分 | 本人 | 支援者 | 原則 | 同意権 | 取消権 | 代理権 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 未成年者 | 18歳未満 | 法定代理人 | 原則、同意が必要 | 法定代理人にあり | あり | 法定代理人にあり |
| 成年被後見人 | 判断能力を欠く常況 | 成年後見人 | 原則、取消し可能 | なし | あり | あり |
| 被保佐人 | 判断能力が著しく不十分 | 保佐人 | 重要行為に同意が必要 | あり | あり | 審判で付与 |
| 被補助人 | 判断能力が不十分 | 補助人 | 審判で定めた行為に同意が必要 | 審判で付与 | 審判で付与 | 審判で付与 |
特に重要なのは、次の3つです。
成年後見人には同意権がない。
保佐人には当然に代理権がない。
補助人の権限は家庭裁判所が決めた範囲に限られる。
この3つは、宅建試験で引っかけとして出やすいです。
制限行為能力者と取消しの効果
制限行為能力者がした契約が取り消されると、その契約は初めから無効だったものとして扱われます。
これを、取消しの遡及効といいます。
ただし、制限行為能力者が相手方に返すべきものは、原則として 現に利益を受けている限度 に限られます。
たとえば、未成年者が親の同意なしに100万円の商品を買い、その契約が取り消された場合を考えます。
商品が残っていれば、商品を返します。
しかし、お金をすでに生活費などに使ってしまい、利益が現存していない場合には、返還義務が限定されることがあります。
宅建では、
制限行為能力者は、現存利益の限度で返還する
と覚えておけば十分です。
相手方の保護:催告権
制限行為能力者と契約した相手方は、いつ取り消されるかわからないと不安定な立場になります。
そこで民法は、相手方を保護するために 催告権 を認めています。
催告権とは、簡単にいうと、
「この契約を取り消すのか、追認するのか、はっきりしてください」
と確認する権利です。
たとえば、未成年者と契約した相手方は、原則として法定代理人に対して、一定期間を定めて追認するかどうかを催告できます。
催告に対して追認があれば、契約は有効に確定します。
宅建で狙われやすい引っかけポイント
最後に、宅建試験で狙われやすいポイントを整理します。
1. 成年後見人に同意権がある?
ありません。
成年後見人には、代理権と取消権があります。
しかし、同意権はありません。
成年後見人が同意して、成年被後見人本人の行為を有効にする、という仕組みではないからです。
2. 保佐人には当然に代理権がある?
ありません。
保佐人に当然にあるのは、重要行為についての同意権と取消権です。
代理権を持つには、家庭裁判所の審判が必要です。
3. 補助人には当然に取消権がある?
ありません。
補助人の同意権・取消権・代理権は、家庭裁判所が定めた範囲に限られます。
4. 日用品の購入も取り消せる?
取り消せません。
成年被後見人・被保佐人・被補助人であっても、日用品の購入など日常生活に関する行為は、原則として取り消しの対象になりません。
5. 未成年者がお小遣いで買い物をしたら取り消せる?
原則として取り消せません。
法定代理人が目的を定めずに処分を許した財産、つまりお小遣いの範囲内であれば、未成年者は自由に使えます。
6. 未成年者が「成人です」と嘘をついたら取り消せる?
詐術にあたる場合は、取り消せません。
未成年者が相手方を積極的にだまして契約した場合まで、未成年者取消権を認めると、相手方に酷だからです。
7. 相手方から制限行為能力を理由に取り消せる?
原則としてできません。
制限行為能力者制度は、本人を保護する制度です。
そのため、取消権を持つのは基本的に本人側です。
不動産取引で考えるとわかりやすい
宅建では、不動産取引に当てはめると理解しやすくなります。
未成年者が土地を買った場合
17歳の未成年者が親の同意なしに土地を買った場合、原則として取り消せます。
土地の購入は、単に権利を得るだけではありません。
代金支払義務を負うため、法定代理人の同意が必要です。
成年被後見人が不動産を売った場合
成年被後見人が単独で不動産を売った場合、原則として取り消せます。
成年後見人が本人に代わって代理するのが基本です。
なお、成年後見人が本人の居住用不動産を処分する場合には、家庭裁判所の許可が必要になる点も重要です。
被保佐人が不動産を売った場合
被保佐人が不動産を売るには、保佐人の同意が必要です。
不動産売買は重要な財産行為だからです。
保佐人の同意なしに売った場合、その売買契約は取り消すことができます。
被補助人が不動産を売った場合
被補助人の場合は、補助人にその不動産売買についての同意権が付与されているかどうかがポイントです。
家庭裁判所が、不動産売買について補助人の同意を必要とする審判をしていれば、同意なしの売買は取り消せます。
一方、そのような審判がなければ、原則として本人単独で有効に契約できます。
最短暗記まとめ
最後に、試験直前用に圧縮してまとめます。
未成年者
18歳未満。
原則として法定代理人の同意が必要。
同意なしの契約は取り消せる。
ただし、単に権利を得る行為、義務を免れる行為、お小遣いの処分、許可された営業行為は単独でできる。
詐術を用いた場合は取り消せない。
成年被後見人
判断能力を欠く常況。
成年後見人には代理権・取消権がある。
ただし、同意権はない。
日用品の購入など日常生活に関する行為は取り消せない。
被保佐人
判断能力が著しく不十分。
借金、保証、不動産売買、相続放棄、遺産分割など重要行為には保佐人の同意が必要。
同意なしなら取り消せる。
保佐人に当然に代理権はない。代理権は家庭裁判所の審判で付与される。
被補助人
判断能力が不十分。
補助は本人の同意を重視する制度。
補助人の同意権・取消権・代理権は、家庭裁判所が決めた範囲だけ。
まとめ
制限行為能力者は、宅建の民法で頻出のテーマです。
最初は用語が似ていて混乱しやすいですが、ポイントはシンプルです。
未成年者は、原則として親の同意が必要。
成年後見人は、代理・取消はできるが、同意はしない。
保佐人は、重要行為について同意・取消ができるが、代理は当然にはできない。
補助人は、家庭裁判所が決めた範囲だけサポートする。
この4つを押さえるだけで、制限行為能力者の問題はかなり解きやすくなります。
宅建試験では、単に知識を問うだけでなく、不動産売買や賃貸借契約に絡めて出題されます。
そのため、
「この人は単独で契約できるのか?」
「誰の同意が必要なのか?」
「同意なしなら取り消せるのか?」
「代理権は当然にあるのか?」
という視点で問題文を読むことが大切です。
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