頬骨骨折について
顔面骨骨折の中でも約30%と頻度が高く、主に以下を生じます。
①頬骨体部骨折
典型的な頬骨体部骨折は、眼窩や上顎骨骨折にも骨折線が及ぶ。また、Tripod骨折ともいわれる頬骨・上顎骨の複合骨折で、体部全体が落ち込むように転位することが多い。
②頬骨弓単骨折
頬骨の解剖
頬骨は顔面の頬部隆起を構成しています。
顔面骨骨折を考える上で大事なのは、Buttress systemの理解。
Buttress systemとは、顔面骨において、垂直方向あるいは水平方向に走る骨の厚い部分を総称したもの 。
垂直方向と水平方向のbuttressにはそれぞれ名前が付いています。
垂直buttress (図の青線)
①nasomaxillary (NM)
②zygomaticomaxillary (ZM)
③pterygomaxillary (PM)
④Vertical mandible(VM)
水平 buttress (図の黄色線)
①supraorbital rim/bar
②inferior orbital rim
③hard palate
治療するときも、このbuttressを意識して固定することが大事。
触診は、骨折しやすい頬骨前頭縫合、眼窩下縁、頬骨下稜、頬骨弓部を確認。
症状
①頬骨体部骨折
①眼球症状
・眼球運動障害、複視→骨折した眼窩底による下直筋などの陥入・インピンジ、眼窩内容物の逸脱で生じる
・眼球位置異常→眼窩の拡大により眼球が尾側に偏位
・開口制限→頬骨弓陥没部で側頭筋がインピンジする、側頭筋・咬筋が打撲で障害される、骨片が下顎突起に挟まるなど
②頬部感覚異常
・三叉神経第2枝(V2)障害
・眼窩下神経損傷
・頬骨神経障害
・偽性咬合不全→上歯槽神経障害により、咬合の違和感を訴える。
③形態異常
頬部・眼部の腫脹、頬部の扁平化、眼球陥没、上眼瞼後退、外眼角下垂 など
③その他
副鼻腔症状(鼻出血など)等
眼窩底部の骨折がある場合、頬骨骨折受傷による球後出血での失明や外傷性視神経障害、鼻かみによる一過性失明を生じる可能性があるため、眼高内圧や球後出血に注意!
②頬骨弓単骨折
開口障害 など
眼窩底部に骨折がある場合は鼻を嚙まない様に指導を。
また、骨折部がずれないように、しばらくは柔らかいものを食べるように指導しましょう。
診断
基本はCT。現在単純レントゲンはほぼ撮影されません。
単純レントゲンの場合、Waters撮影、頬骨弓軸位(顔面軸位)で撮影。
手術適応
・頬部の平坦化・・・整容面で希望があれば
・眼球運動障害、複視の出現
・開口障害・・・2横指程度開くかどうかが目安
視神経障害や下直筋・外眼筋絞扼が疑われれば緊急手術なので、画像も含め所見をしっかり観察を!
若年者では成人に比べて狭い範囲で骨折が生じやすく、下直筋・外眼筋など絞扼されやすい
下直筋絞扼は、眼心臓反射による一過性失神,低血圧,悪心・嘔吐,徐脈などを呈するので、術前・術中も含めてしっかり確認を!
手術
基本は ①眉毛外側(前頭頬骨縫合部)、②口腔前庭部、③経結膜 または 睫毛下 の3か所を開けることになります。場合によって、側頭部を開けることもあります。
まず3か所を開け、骨折部をU字鈎で整復した後、プレートなどで固定します。
固定は前述したとおり、Buttressをしっかり止めることが大事で、骨片の落ち込みなどは多少気にしなくても問題ありません。
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