筋トレをしていると、筋肉より先に痛くなる場所があります。
それが、腱です。
たとえば、
- ベンチプレスで肘が痛い
- スクワットで膝のお皿の下が痛い
- ランニングでアキレス腱が痛い
- 懸垂やカールで肘の外側が痛い
このような痛みは、筋肉痛ではなく、腱や腱の付着部に負担がかかっている可能性があります。
筋肉は鍛えれば比較的早く強くなります。
しかし、腱は筋肉よりも適応に時間がかかります。
そのため、筋肉の成長に合わせて重量や回数を急に増やすと、腱が追いつかずに痛みが出ることがあります。
今回は、腱を強くする筋トレ理論について解説します。
腱とは何か?
腱とは、筋肉と骨をつないでいる組織です。
筋肉が収縮すると、その力は腱を通じて骨に伝わり、関節が動きます。
たとえば、アキレス腱はふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつないでいます。
膝蓋腱は太ももの前の筋肉とすねの骨をつないでいます。
手首を伸ばす筋肉の腱は、肘の外側に付着しており、ここが痛くなるとテニス肘と呼ばれます。
つまり、腱は筋肉の力を骨に伝える重要な「ワイヤー」のような存在です。
筋トレでは筋肉に注目しがちですが、実際には腱にも大きな負荷がかかっています。
腱は休めば治るだけではない
腱が痛くなると、多くの人は「しばらく休めば治る」と考えます。
もちろん、痛みが強い時期に休むことは大切です。
しかし、腱障害では、完全に休むだけでは再発しやすいことがあります。
なぜなら、腱は負荷に適応して強くなる組織だからです。
アキレス腱症の2024年版JOSPT臨床ガイドラインでも、腱への負荷をかける運動は第一選択の治療として推奨されています。内容としては、エキセントリック運動だけでなく、コンセントリック運動、等尺性運動などを含む「tendon loading exercise」として整理されています。(日本理学療法士協会)
つまり、腱の痛みでは、
休むだけでなく、適切な負荷を段階的に戻すこと
が重要です。
腱が痛くなりやすい理由
腱が痛くなりやすい原因は、単純に「使いすぎ」だけではありません。
多くの場合は、
腱が耐えられる負荷を超えた
と考えると分かりやすいです。
たとえば、
- 急に重量を上げた
- 急に走る距離を増やした
- 久しぶりにジャンプ運動をした
- 同じ部位を連日追い込んだ
- フォームが崩れていた
- 睡眠不足や疲労がたまっていた
このようなとき、腱への負荷が急に増えます。
筋肉は対応できても、腱が対応できないと痛みが出ます。
腱障害の考え方として有名な「continuum model」では、腱は負荷に対して段階的に変化し、早い段階で適切に負荷管理を行うことが重要とされています。(British Journal of Sports Medicine)
腱を強くするには「適切な負荷」が必要
腱を強くするには、完全な安静ではなく、適切な負荷が必要です。
ただし、痛みを我慢して全力でトレーニングすればよいわけではありません。
ポイントは、
痛みを悪化させない範囲で、少しずつ負荷をかけること
です。
腱のトレーニングでは、次のような方法がよく使われます。
- 等尺性トレーニング
- エキセントリックトレーニング
- Heavy Slow Resistance
- 段階的な通常トレーニングへの復帰
それぞれ簡単に解説します。
等尺性トレーニング
等尺性トレーニングとは、関節を動かさずに力を入れるトレーニングです。
たとえば、
- 壁を押し続ける
- 膝を軽く曲げた状態でキープする
- つま先立ちの姿勢をキープする
- 手首を動かさずに抵抗に耐える
といった方法です。
等尺性トレーニングは、痛みがある時期でも比較的取り入れやすい方法です。
膝蓋腱症では、等尺性運動が短期的な疼痛軽減に役立つ可能性が報告されています。ただし、効果には個人差があり、これだけで完全に治すというより、リハビリ初期の選択肢の一つとして考えるのがよいです。(Europe PMC)
エキセントリックトレーニング
エキセントリックトレーニングとは、筋肉が伸ばされながら力を出すトレーニングです。
たとえば、
- かかとをゆっくり下ろすカーフレイズ
- スクワットでゆっくりしゃがむ
- ダンベルをゆっくり下ろす
- 手首をゆっくり下ろす
といった動作です。
腱障害のリハビリでは、昔からエキセントリック運動がよく使われてきました。
特に、アキレス腱症やテニス肘では、エキセントリック運動が痛みや機能改善に役立つ可能性があります。テニス肘に対するエキセントリック運動も、痛みの軽減や機能改善に有効とする報告があります。(PMC)
ただし、現在では「エキセントリックだけが正解」というより、等尺性運動や通常の筋トレ、Heavy Slow Resistanceなどを組み合わせて考える流れになっています。
Heavy Slow Resistanceとは?
Heavy Slow Resistanceとは、やや重めの負荷を使い、ゆっくり動作する筋トレです。
日本語では「高負荷低速トレーニング」といえます。
たとえば、アキレス腱であれば、
- カーフレイズをゆっくり上げる
- ゆっくり下ろす
- ある程度の重さを使う
- 痛みを見ながら段階的に負荷を上げる
という方法です。
アキレス腱症に対しては、エキセントリックトレーニングとHeavy Slow Resistanceの両方で良好な結果が得られ、Heavy Slow Resistanceの方が満足度や継続率で有利だったという報告もあります。(ResearchGate)
つまり、腱を強くするには、
軽く動かすだけでなく、段階的にしっかり負荷をかける
ことも重要です。
痛みがあるときの目安
腱の痛みがあるときに大切なのは、痛みを完全にゼロにするまで何もしないことではありません。
ただし、痛みを無視して追い込むのも危険です。
目安としては、
- 運動中の痛みが軽い
- 翌日に痛みが悪化しない
- 日常生活の痛みが増えない
- 腫れや熱感がない
- フォームが崩れない
範囲で行うのが基本です。
逆に、
- 痛みがだんだん強くなる
- 翌日に明らかに悪化する
- 朝のこわばりが強くなる
- 腫れがある
- 力が入りにくい
- 日常生活でも痛い
このような場合は、負荷が強すぎる可能性があります。
その場合は、重量、回数、セット数、頻度、可動域を見直しましょう。
部位別の考え方
アキレス腱
アキレス腱は、ランニング、ジャンプ、カーフレイズなどで負担がかかります。
痛みがある場合は、いきなりダッシュやジャンプを再開するのではなく、
- 両脚カーフレイズ
- 片脚カーフレイズ
- ゆっくり下ろすカーフレイズ
- 重りを持ったカーフレイズ
- ジャンプやランニングへの復帰
というように段階を踏みます。
膝蓋腱
膝蓋腱は、ジャンプ、スクワット、ランジ、階段などで負担がかかります。
痛みがある場合は、
- 壁座り
- スペインスクワット
- レッグエクステンションの等尺性保持
- ゆっくりしたスクワット
- ジャンプ動作への復帰
のように段階的に進めます。
テニス肘
テニス肘は、手首を伸ばす筋肉の腱に負担がかかることで起こります。
テニスだけでなく、
- パソコン作業
- スマホ操作
- ダンベルカール
- 懸垂
- 重い荷物を持つ動作
でも起こることがあります。
痛みがある場合は、
- 手首を動かさずに力を入れる等尺性運動
- 軽いダンベルで手首をゆっくり下ろす運動
- 握力や前腕の筋力強化
- 日常動作での負荷調整
が重要です。
腱を痛めないための予防法
腱の痛みを予防するには、急に負荷を増やさないことが重要です。
具体的には、
- 重量を急に上げない
- セット数を急に増やさない
- ランニング距離を急に増やさない
- 同じ部位を連日追い込まない
- 睡眠不足の日は軽めにする
- 痛みが出るフォームを見直す
- ウォームアップを行う
- 4〜8週間に一度は軽めの週を作る
ことです。
特に、筋トレ初心者や40代以降では、筋肉より腱や関節の適応が遅れることがあります。
「筋肉はまだいける」と思っても、腱が耐えられないことがあります。
筋トレでは、筋肉だけでなく腱も鍛えているという意識が大切です。
まとめ
腱は、筋肉と骨をつなぎ、力を伝える重要な組織です。
筋トレでは筋肉だけでなく、腱にも大きな負担がかかります。
腱の痛みは、完全に休めばよいという単純なものではありません。
大切なのは、
痛みを悪化させない範囲で、段階的に負荷をかけること
です。
腱を強くする方法には、
- 等尺性トレーニング
- エキセントリックトレーニング
- Heavy Slow Resistance
- 段階的な通常トレーニングへの復帰
があります。
ただし、痛みを無視して続けるのは危険です。
翌日に痛みが悪化する、腫れがある、日常生活でも痛い場合は、負荷が強すぎるサインです。
筋肉は比較的早く強くなります。
しかし、腱はゆっくり適応します。
だからこそ、筋トレでは焦らず、少しずつ負荷を上げることが大切です。
腱を守ることは、長く筋トレを続けるための土台です。
筋肉だけでなく、腱も強くする。
これが、ケガをしない筋トレの重要な考え方です。
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