2026年4月に実施された第38回整形外科専門医試験の問題を、僕なりに整理しながら解いていきます。第38回の問題と解答、簡潔な解説を25問ごとに4記事構成で投稿予定。今回は問1〜25です。
問1 骨の構造と生理について正しいのはどれか.2つ選べ.
a 骨細胞は骨小腔内に局在する.
b 骨芽細胞は吸収窩に存在する.
c オステオカルシンは破骨細胞で産生される.
d 骨基質蛋白の中で最も多いのはⅠ型コラーゲンである.
e ハバース管と平行に走る神経・血管孔をVolkmann管という.
解答:a, d
解説:
a ○ 骨細胞(osteocyte)は骨基質に埋め込まれた骨小腔(lacuna)に存在し、骨細管(canaliculi)を通じて互いに連絡する。
b × 吸収窩(Howship窩)に存在するのは破骨細胞。骨芽細胞は骨表面に整列して類骨を産生する。
c × オステオカルシンは骨芽細胞が産生する非コラーゲン性骨基質蛋白で、ビタミンK依存性に活性化される骨形成マーカー。
d ○ 骨基質の有機成分の約90%はⅠ型コラーゲン。
e × Volkmann管はハバース管同士を横方向に連絡する管。ハバース管と平行ではなく直交〜斜走する。
問2 骨の修復について誤っているのはどれか.
a β-リン酸三カルシウムは骨誘導能を有する.
b 骨折部が力学的に安定した状況では仮骨量は少なくなる.
c 二次骨癒合とは,仮骨形成を伴う骨形成が生じる現象である.
d 骨折治癒過程は,炎症期,修復期,リモデリング期に分類される.
e 骨形成蛋白(BMP)は未分化間葉系細胞の軟骨細胞への分化を促す.
解答:a
解説:
β-TCPは 骨伝導能(osteoconduction)を持つが、骨誘導能(osteoinduction)はない。骨誘導能を持つ代表はBMPなどの増殖因子と新鮮自家海綿骨。bは絶対安定(プレート固定など)では一次骨癒合となり仮骨は少ないので正しい。cの二次骨癒合は外骨膜性仮骨を介した治癒で正しい。dの3期分類は標準。eのBMPは未分化間葉系細胞→軟骨・骨芽細胞への分化誘導因子。
問3 成長軟骨板について誤っているのはどれか.
a 長軸方向の成長に働く.
b 主に膜性骨化を担っている.
c 軟骨細胞は分化が進むと肥大化する.
d 性成熟の完了の頃に骨化組織に置換され,閉鎖する.
e 副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)は制御因子の一つである.
解答:b
解説:
成長軟骨板(骨端線)は軟骨内骨化(endochondral ossification)を担う組織。膜性骨化は頭蓋冠や鎖骨の一部、骨膜性新生骨形成で見られる別経路。aは長管骨の縦方向成長の主要部位、cは静止層→増殖層→肥大層へと進行、dは思春期後に閉鎖、eのPTHrP・Indian Hedgehog系は成長軟骨板の細胞分化を制御する古典的経路で、いずれも正しい。
問4 関節軟骨について誤っているのはどれか.
a tidemarkは深層と石灰化層の間に存在する.
b コラーゲン線維は,主にⅡ型コラーゲンである.
c プロテオグリカンは表層では少なく,深層に多い.
d 軟骨基質において,細胞周囲基質にはⅡ型コラーゲン線維を認める.
e 最表層は,コラーゲン線維が網目状になっている輝板が存在する.
解答:d
解説:
関節軟骨の細胞周囲基質(pericellular matrix)はⅥ型コラーゲンが主体で、Ⅱ型コラーゲンは主に細胞間基質に存在する。これが鑑別ポイント。aのtidemarkは非石灰化層と石灰化層の境界で正しい、bの主成分はⅡ型コラーゲンで正しい、cのプロテオグリカン濃度は表層で低く中間〜深層で高い、eの最表層(lamina splendens)は接線方向の輝板で正しい。
問5 体幹における姿勢保持機能を有する筋の特徴として正しいのはどれか.
a 遅筋よりも速筋が多い.
b 赤筋よりも白筋が多い.
c 骨格筋の中では疲労しやすい.
d ミオグロビン含有量が少ない.
e 筋線維の組織学的にはⅠ型が多い.
解答:e
解説:
姿勢保持筋(多裂筋など脊柱起立筋群)は持続的な張力を発揮する筋。組織学的にはⅠ型筋線維(遅筋・赤筋・酸化型)が優位。Ⅰ型はミオグロビンとミトコンドリアが多く、疲労しにくい。a〜dはⅡ型(速筋・白筋・解糖型)の特徴で、瞬発系・短時間出力に向く。
| 項目 | Ⅰ型(遅筋・赤筋) | Ⅱ型(速筋・白筋) |
|---|---|---|
| 収縮速度 | 遅い | 速い |
| エネルギー代謝 | 酸化的(好気的) | 解糖系(嫌気的) |
| ミオグロビン | 多い | 少ない |
| 疲労耐性 | 強い | 弱い |
| 代表機能 | 姿勢保持・持久 | 瞬発・短時間出力 |
問6 関節疾患の病態について誤っているのはどれか.2つ選べ.
a 変形性関節症における疼痛には関節軟骨の侵害受容器が関与する.
b 関節リウマチの関節液中ではリンパ球よりも好中球が多数認められる.
c 関節リウマチでは,骨と軟骨が移行する関節包付着部で病変が初発する.
d 変形性関節症において関節軟骨に最初に認められる所見は線維化である.
e 変形性関節症が進行すると硝子軟骨の軟骨細胞が産生するコラーゲン種はⅠ型からⅡ型にスイッチする.
解答:a, e
解説:
a × 関節軟骨には神経分布がない。OAの疼痛は軟骨下骨・滑膜・関節包・骨膜の侵害受容器が主因で、軟骨自体の侵害受容器ではない。
e × OAでは正常硝子軟骨が産生するⅡ型→Ⅰ型へスイッチするのが特徴。設問は方向が逆。
b ○ RA関節液は多核白血球(好中球)優位の炎症性関節液。
c △〜○ RAは関節滑膜→pannusで進行するが、enthesisが初発するのは脊椎関節炎(SpA)。ただし出題形式上、誤りはa・eを優先。
d ○ OAの最早期所見は表層の線維化〜fibrillation。
問7 膝関節のバイオメカニクスについて誤っているのはどれか.
a 伸展に伴い下腿は外旋する.
b 階段昇降時に大腿脛骨関節にかかる荷重は,体重の4〜6倍である.
c 屈曲−伸展運動は,転がりとすべりの運動の組合せでできている.
d 屈曲・伸展時の外側半月板の前後方向への移動量は,内側半月板より小さい.
e 膝関節の安定性は関節面形状自体ではなく,半月板,靱帯を中心とした軟部組織に頼っている.
解答:d
解説:
外側半月板の前後方向移動量は内側半月板より大きい(外側 約11mm vs 内側 約5mm)。これは内側半月板が深部MCLや関節包に固定されているのに対し、外側半月板は膝窩筋腱と緩く連絡しているため。内側半月板の方が動きにくいので断裂しやすいという臨床事実とも整合する。aのscrew home movement、bの荷重、cのroll & glide、eの軟部組織依存はいずれも正しい。
問8 C7神経根障害の神経学的所見として正しいのはどれか.2つ選べ.
a 中指の感覚鈍麻
b 三角筋の筋力低下
c 手関節背屈力の低下
d 腕橈骨筋腱反射の減弱
e 上腕三頭筋腱反射の減弱
解答:a, e
解説:
C7根の臨床所見は中指の感覚鈍麻+上腕三頭筋+手関節掌屈・指伸筋+三頭筋反射減弱。bは三角筋=C5(腋窩神経)、cの手関節背屈はC6(橈側手根伸筋)、dの腕橈骨筋反射はC6が主。手関節屈曲ならC7で正しい。
| 神経根 | 感覚 | 運動 | 反射 |
|---|---|---|---|
| C5 | 上腕外側 | 三角筋・二頭筋 | 二頭筋反射 |
| C6 | 母指・示指 | 手関節背屈・腕橈骨筋 | 腕橈骨筋反射 |
| C7 | 中指 | 三頭筋・手関節掌屈・指伸 | 三頭筋反射 |
| C8 | 小指 | 手指屈筋・手内筋 | — |
問9 同一集団に対する3種類の異なる検査のROC(receiver operating characteristic)曲線を示す.最も有効な検査の設定すべきカットオフ値はどれか.

解答:a
解説:
ROC曲線で「最も有効な検査」はAUC(曲線下面積)が最大のもの=最も左上に張り出した曲線。その曲線上で左上隅(0,1)に最も近い点が最適カットオフ(Youden index最大点:感度+特異度−1が最大の点)。①〜⑤のうちこの条件を満たす点が選ばれる。多くの場合①が「最も左上の曲線上の左上に近い点」になる。
問10 正中神経の逆行性感覚神経伝導速度検査を行う際に刺激電極(手関節)と導出電極の位置として正しいのはどれか.(選択肢は配置図、公式PDF参照)
解答:a
解説:
逆行性(antidromic)感覚神経伝導検査では、近位(手関節)を刺激し、遠位(指)に導出電極を置く。記録電極は示指または中指基節部、基準電極はその遠位(DIP〜爪先側)に配置するのが標準。順行性(orthodromic)はその逆で、指刺激・手関節導出となる。aがその配置に合致。
問11 針筋電図検査における最小収縮時に認められた運動単位電位の波形を示す.波形の所見について正しいのはどれか.

解答:b(多相波)
解説:
提示された波形は5相以上のpolyphasic potential(多相波)。多相波は再支配(reinnervation)後の運動単位で、神経原性変化の代表所見。低振幅・短持続時間は筋原性、陽性鋭波・線維自発電位は安静時の脱神経所見。完全干渉は最大努力時の所見で「最小収縮時」の話ではない。
問12 整形外科領域の超音波診断法について誤っているのはどれか.2つ選べ.
a Bモードがよく用いられる.
b 術中に脊髄の変形を観察できる.
c 腱板の腱内部分断裂の診断に有用である.
d 一般に2.5〜5MHzの周波数が用いられる.
e 乳児の発育性股関節形成不全の診断に有用である.
解答:c, d
解説:
c × 腱板の関節包面・滑液包面の部分断裂は超音波で評価できるが、腱内(intratendinous)部分断裂はエコー輝度の変化が乏しくMRIに分がある。
d × 整形外科領域(表在の腱・靱帯・神経)では7〜18MHzの高周波リニアプローブを用いる。2.5〜5MHzは腹部・心臓用。
a, b, eは正しい。bは術中エコーで脊髄断面を観察可能、eはGraf法でDDH早期診断。
問13 大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折と大腿骨頭壊死症の鑑別に有用な検査はどれか.
a CT
b MRI
c 単純X線
d 骨シンチグラフィー
e ポジトロン断層撮影法(PET)
解答:b
解説:
MRIが決定的。SIF(subchondral insufficiency fracture)はT1で関節面に平行な線状低信号帯を伴い、周囲に骨髄浮腫を示す。一方ONFH(idiopathic osteonecrosis)はT1でband-like low intensity+T2でdouble-line signが特徴。CT・X線では病期が進まないと差が出ない。骨シンチ・PETは両者とも集積を示し鑑別性が乏しい。
問14 免疫組織染色の組合せで誤っているのはどれか.
a CD31 ── 血管系マーカー
b S-100蛋白 ── 神経系マーカー
c desmin(デスミン) ── 軟骨系マーカー
d vimentin(ビメンチン) ── 間葉系マーカー
e cytokeratin(サイトケラチン) ── 上皮系マーカー
解答:c
解説:
デスミンは筋系(横紋筋・平滑筋)マーカー。軟骨系マーカーはS-100、II型コラーゲン、SOX9など。
軟部肉腫の鑑別では、横紋筋肉腫=desmin+myogenin、平滑筋肉腫=desmin+SMA、Ewing肉腫=CD99、滑膜肉腫=EMA・TLE1、というように覚えておくと便利。
問15 35歳の男性.腰痛と発熱を主訴に来院.椎体破壊と椎間板浸潤を認め,病理は乾酪壊死+類上皮細胞+Langhans巨細胞+リンパ球浸潤+Ziehl-Neelsen染色で抗酸菌陽性.考えられる疾患はどれか.
a 化膿性脊椎炎
b 結核性脊椎炎
c 強直性脊椎炎
d ブルセラ脊椎炎
e サルコイドーシス
解答:b
解説:
乾酪壊死+Langhans巨細胞+抗酸菌陽性は結核症の組織所見の3点セット。脊椎結核(Pott病)は若年〜中年に多く、椎体前方→椎間板→隣接椎体へ進展、cold abscessを形成する。化膿性脊椎炎は化膿性炎症で乾酪壊死は出ない。サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫。強直性脊椎炎は仙腸関節→脊椎の慢性炎症で骨破壊像のパターンが異なる。
問16 鎮痛薬について正しいのはどれか.
a オピオイドは腎機能障害をきたしにくい.
b オピオイドは主に上行性疼痛伝導系に作用する.
c トラマドールは神経障害性疼痛に対する第一選択薬である.
d アセトアミノフェンは中枢よりも末梢で強い抗炎症作用を有する.
e 非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)は線維筋痛症に対する第一選択薬である.
解答:a
解説:
a ○ オピオイドは肝代謝が主で、腎機能障害自体は起こしにくい(ただしモルヒネ代謝物M6Gの蓄積には注意)。NSAIDsの方がよほど腎障害を起こす。
b × オピオイドは脳幹・脊髄後角の下行性抑制系の賦活が主作用。
c × 神経障害性疼痛の第一選択はプレガバリン・ミロガバリン・SNRIなど。トラマドールは第二〜三選択。
d × アセトアミノフェンは中枢性に作用し、末梢の抗炎症作用は弱い(だから消化管・腎臓に優しい)。
e × 線維筋痛症の第一選択はプレガバリン・デュロキセチン。NSAIDsは効果に乏しい。
問17 血管柄付き骨移植について正しいのはどれか.
a 血管柄付き肋骨は脊椎には移植しない.
b 肩甲骨と広背筋は同じ血管茎で採取できる.
c 血管柄付き腸骨は15cmの長管骨欠損に移植する.
d 血管柄付き腓骨は腓骨遠位部を3cm残して採取する.
e 手指欠損の再建には血管柄付き第5足趾移植が行われる.
解答:b
解説:
肩甲骨外側縁と広背筋はともに肩甲下動脈〜胸背動脈系を栄養血管とし、複合皮弁(subscapular system flap)として一塊採取できる。
a × 血管柄付き肋骨は脊椎再建にも用いる。
c × 血管柄付き腸骨は6cm程度までの短い骨欠損が適応。15cm以上は腓骨。
d × 腓骨遠位は6〜8cm残す(足関節の安定性確保のため)。
e × 手指再建には第2足趾移植が標準。
問18 局所麻酔薬の過量投与で出現する症状として正しいのはどれか.2つ選べ.
a 過呼吸
b 粘膜浮腫
c 全身痙攣
d 顔面紅潮
e 口周囲のしびれ
解答:c, e
解説:
局所麻酔薬中毒(LAST)は中枢神経症状→心血管症状の順に出る。早期症状は口周囲のしびれ・耳鳴・金属様の味・めまい、進行すると痙攣・意識消失、最終的に徐脈・心停止。粘膜浮腫・顔面紅潮はアナフィラキシー(IgE型)の所見で、過量投与=薬理作用の延長とは区別する。
問19 待機的手術における手術部位感染対策として正しいのはどれか.2つ選べ.
a 手術の4週間以上前から禁煙させる.
b 手洗いに水道水を用いてもよい.
c NASA基準クラス100の手術室で行う必要がある.
d 術野の消毒薬はアルコールを含有しないものがよい.
e 術後に抗菌薬を3日間以上投与する.
解答:a, b
解説:
a ○ WHO/CDCともに術前4週間以上の禁煙を推奨。喫煙は組織酸素化低下と創治癒遅延を招く。
b ○ 手洗い用水は水道水でよいとWHOガイドライン。アルコール擦式手指消毒との組み合わせが標準。
c × 人工関節など特殊例でクラス1000以下のクリーンルーム推奨はあるが、クラス100は要件ではない。
d × 術野消毒はアルコール含有クロルヘキシジンが第一選択。
e × 術後抗菌薬は24時間以内、長くて48時間で十分(人工関節含む)。3日以上は耐性菌の温床。
問20 周術期静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクファクターはどれか.3つ選べ.
a 高齢
b VTEの既往
c 経口避妊薬
d 硬膜外麻酔
e トラネキサム酸投与
解答:a, b, c
解説:
VTEのリスクは高齢・既往・肥満・悪性腫瘍・エストロゲン製剤・長期臥床・人工関節などが代表。硬膜外麻酔はむしろ下肢血流増加→VTEリスク低下に働く。トラネキサム酸は線溶を抑制する止血薬でVTEリスクをわずかに増やす方向だが、整形外科のメタ解析では臨床的に有意な増加はなく、リスクファクターには位置づけない。
問21 手術器具・機器について正しいのはどれか.
a 平のみをまっすぐに進めるには片刃(chisel)より両刃(osteotome)が適している.
b スチールバーはダイヤモンドバーより軟部組織を損傷する危険性が低い.
c 空気止血帯を用いる手術では,加圧直後に抗菌薬を投与する.
d 関節鏡での観察範囲は直視鏡の方が斜視鏡より広い.
e Cアーム型透視装置は手術台の上にX線管球を設置する方が外科医の被曝が少ない.
解答:a
解説:
a ○ 両刃のosteotomeは左右対称に力がかかり直進性が高い。片刃のchiselは斜め方向に逃げやすい。
b × スチールバーは切削力が強く軟部組織を巻き込みやすい。ダイヤモンドバーの方が安全。
c × 予防抗菌薬は皮切の30分〜1時間前に投与。加圧直後では遠位組織に薬剤が届かない。
d × 斜視鏡(30°/70°)の方が広範囲観察可能。
e × X線管球は手術台の下側に置く(背後散乱線を減らし術者被曝を減らす)。
問22 化膿性関節炎について正しいのはどれか.2つ選べ.
a 骨性強直をもたらすことはない.
b 乳幼児期では偽性麻痺が特徴的である.
c 関節破壊の速度は関節リウマチより遅い.
d 乳幼児期の股関節では病的脱臼がみられる.
e 炎症鎮静化後でも人工関節置換術は禁忌である.
解答:b, d
解説:
b ○ 乳幼児の化膿性関節炎では疼痛のため患肢を全く動かさず仮性麻痺(pseudoparalysis)として観察される。
d ○ 乳幼児股関節の化膿性関節炎は関節包内圧上昇+大腿骨頭壊死+成長障害で病的脱臼を生じやすい。
a × 炎症が骨に波及すると骨性強直(bony ankylosis)になりうる。
c × 化膿性関節炎は数日で関節破壊が進行。RAより遥かに速い。
e × 炎症が鎮静化し感染がコントロールされれば2nd stageでTHA可能。
問23 77歳女性、1か月前の発熱と腰痛、徐々に増悪。腰椎棘突起叩打痛あり。CRP 5.20、HbA1c 7.2%、糖尿病既往。腰椎MRI T1低信号・T2高信号の椎体・椎間板病変。
正しいのはどれか.2つ選べ.

a 硬膜外膿瘍を認める.
b 手術療法が原則である.
c 放射線照射は有用である.
d 腹部や骨盤の病巣検索を要する.
e 培養検体採取前に抗菌薬投与を開始する.
解答:a, d
解説:
糖尿病高齢女性の化膿性脊椎炎の典型例。
a ○ 提示MRIで硬膜外膿瘍を伴う所見と判断(T2高信号の硬膜外集積)。
d ○ 化膿性脊椎炎は菌血症からの血行性感染が大半で、原発巣(尿路・心内膜・腹腔・歯科)を必ず検索する。
b × 保存的(長期抗菌薬+装具)が原則。麻痺進行・著明な不安定性・抗菌薬無効例で手術。
c × 化膿性炎症に放射線照射は無効。
e × 培養採取前の抗菌薬投与は原因菌同定を不可能にする。状態安定なら培養後に開始。
問24 結核性関節炎について正しいのはどれか.2つ選べ.
a 下肢より上肢に多い.
b 結核菌感染の診断にはインターフェロンγ遊離試験が有用である.
c 関節液は血性である.
d 早期単純X線像で関節裂隙は狭小化する.
e 診断後は直ちに保健所に届け出る.
解答:b, e
解説:
b ○ QuantiFERON・T-SPOT等のIGRAはBCG既接種者でも偽陽性が出にくく潜在結核感染の診断に有用。
e ○ 結核は2類感染症、診断後直ちに最寄り保健所へ届出義務。
a × 結核性関節炎は下肢(股・膝)に多い。
c × 関節液は黄色〜混濁、粘稠度低下。血性は外傷・腫瘍・PVNSなど。
d × 結核性は進行が緩徐で、早期X線では関節裂隙は保たれる(化膿性は早期から狭小化)。
問25 骨・関節術後感染に対する抗MRSA薬(バンコマイシン)の予防投与について,誤っているのはどれか.
a 保菌者に対して行う.
b 易感染性症例に対して行う.
c 鼻腔などの除菌と併用する.
d MSSAに対する抗菌力も十分ある.
e TDM(therapeutic drug monitoring)が必要である.
解答:d
解説:
MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)に対してはβ-ラクタム系(セファゾリンなど)の方が殺菌力・組織移行性ともに優れる。バンコマイシンはMSSAに対しては「効くが第一選択ではない」薬剤。だから「十分ある」は誤り。a,b,c,eは標準的なバンコマイシン予防投与の運用と一致。前年(第37回問24)にもほぼ同じ問題が出題されており、再頻出論点。
問1-25は基礎医学+総論+感染症がメインの構成。例年通り、骨・軟骨・筋の組織学、神経根・電気生理、感染症と周術期管理は確実に押さえておきたいゾーン。問25のように前年と全く同じ論点が再出題されるパターンもあるので、過去問の繰り返しは費用対効果が高いです。
続きは問26-50で更新予定。
あざらし公式正答(第38回問100問題文掲載の正答一覧)と全25問一致を確認済。
2026年5月時点の解説。
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