どーも、こんにちは。
今回は、形成外科医になるにあたって、ケロイド/肥厚性瘢痕についてまとめてみました。
ケロイド/肥厚性瘢痕って体質だからしょうがない
って思ってましたが、最近だと結構治療できるみたいですね。
今回は、ケロイド/肥厚性瘢痕の違いと原因。ついでに専門的な予防法と治療についても解説します。
ケロイド/肥厚性瘢痕とは?原因は?
ケロイド/肥厚性瘢痕は、手術などの創傷が術後赤くミミズ腫れのようになってしまうもの。
原因ですが「真皮網状層の創傷治癒過程の異常」とされています。
皮膚は下図のように表皮~真皮~皮下組織と構成されます
真皮は浅層の乳頭層と深層の網状層に分かれますが、深層部分の網状層が損傷し治癒する過程で炎症が生じます。
通常であればこの炎症が徐々に減弱していきますが、炎症が‘‘慢性化‘‘してしまうことがケロイド/肥厚性瘢痕の原因とされています。
そのため、表皮や真皮浅層までの擦過傷であればケロイド/肥厚性瘢痕は生じません。
この‘‘慢性炎症‘‘を起こさせないもしくは減弱させることが、予防法または治療法になります。
ケロイドと肥厚性瘢痕の違い
違いってあるんですか??
と思っていましたが、厳密には違う病態と考えられています。
以下、日本形成外科学会より
肥厚性瘢痕 | ケロイド | |
成因 | 真皮中層から広く広範囲に損傷が及んだ場合 「創傷治癒の遅延」により発生 | 不明、真皮の表層のわずかな損傷でも、発症原因となりうる |
人種 | ケロイドほど人種差なし | 黒人>黄色人種>白人 |
体質 | 特にないが、高度型ではケロイド体質を認めることがある | いわゆるケロイド体質 |
好発部位 | 全身どこでも発生の可能性がある。特に関節部など可動部で傷痕に緊張のかかりやすいところ。また皮膚の部位的性状にもよる | 胸の正中部、三角筋部、肩甲部、耳介、耳後部、恥骨上部が好発部位。但し、全身どこでも発生の可能性はある |
自覚症状 | かゆい、いたい、あかい、ひきつれ感 | 左と同じであるが、症状はより強い |
他覚症状 | 赤みがあり、盛り上がっている。もとの傷の範囲を越えない | 赤みと盛り上がりが、周辺にしみだす |
表:肥厚性瘢痕とケロイドの違い
要するにケロイド>肥厚性瘢痕で症状がひどいまたは治療が難しいということ。
病理レベルで違いはあるようですが、明確な病態の違いは分かっていないようです。
ケロイドは創を超えて広がることもあり治療に難渋することも多い。一方、肥厚性瘢痕は創を超えて広がりにくく、ケロイドより治療が容易とされています。
そのため
・ケロイド=炎症が強いもしくは持続時間が長い
・肥厚性瘢痕=比較的炎症が弱いもしくは持続時間が短い
と考えられます。
ケロイド/肥厚性瘢痕の局所因子
1)創部の深さ
真皮網状層まで達しない創傷では生じません。
2)創傷治癒までの期間
創傷治癒が長ければ(慢性化)ケロイド/肥厚性瘢痕が生じやすくなります。
3週間上皮化しない創傷の70%にケロイド/肥厚性瘢痕が生じやすくなると報告されています。
逆に顔面のような血流のよい組織は2週間程度で上皮化するので、瘢痕にはなりにくいようです。
3)創傷部位
創傷治癒過程の炎症が慢性化することで生じるため、皮膚張力が強い箇所や日常動作で皮膚の伸展・収縮を繰り返す場所に生じやすい。逆に言えば、皮膚が動かないところは生じにくいということになります。
・好発部位は、前胸部、上腕~肩甲骨部、下腹部
・非好発部位は、頭頂部、上眼瞼、前脛骨部
恥骨部はかなりケロイドになりやすく、事前にZ形成入れてます。
全身因子
1)妊娠
エストロゲン・プロゲステロンなどの性ホルモンによる血管拡張や毛細血管増殖が原因と考えられています
2)飲酒・入浴・運動
飲酒で血管拡張するためと考えられています
3)高血圧
血管内皮細胞の機能低下が原因とされています
4)糖尿病
血管内皮細胞の機能低下が原因とされているが、統計的には因果関係ははっきりせず。
5)炎症性サイトカイン
6)遺伝因子(家系、人種など)
治療指針
予防/治療方法
保存加療
内服薬
2022年現在保険適応なのは「トラニラスト(リザペン)」。
⇒抗アレルギー薬なので、炎症系の伝達物質を抑制することで掻痒感を抑えて、かつ病態沈静効果もあるらしい。
重症化の場合はプレドニンなどの内服も行います。
保険適応外の薬として柴苓湯も効果があるようです。
外用薬
1か月以上の長期に及ぶステロイド概要は真菌症なども起こるため、ワセリンなどの保湿剤も挟みながら使用します。
1)テープ剤
副腎皮質ホルモンテープ剤「ドレニゾンテープ=V群:weak」と「エクラープラスター=Ⅲ群:strong」を使います。
小児は弱いドレニゾンテープから使用し、成人はエクラープラスターから使用してもOK。
接触性皮膚炎に注意。ステロイドの効果でマスクされることも。
ステロイドの副作用として皮膚の菲薄化があげられます。
貼付の際は、ケロイド部分にのみ貼付し、正常皮膚にはなるべく被らないよう指導しましょう。
2)軟膏・クリーム
瘢痕予防目的としても使われ、その場合はロコイド(weak)やリンデロン(strong)が使用されることが多い。
ステロイドの強さは5段階ありますが
Ⅰ群(strongest)
Ⅱ群(very strong)
Ⅲ群(strong)
Ⅳ群(mild)
Ⅴ群(weak)
貼付剤の方が皮膚の吸収量が高いため、軟膏やクリームと比べて強さが1~2段階Upしていると考えます。
つまり、ドレニゾンテープはweakですが軟膏に代替する場合はstrong。エクラープラスターはstrongなので軟膏に代替する場合はstrongest もしくはvery strongのステロイド軟こうを用います。
治療としてステロイド軟膏を用いる場合、リンデロンもしくはデルモベート軟膏を使用することになります。
ただし、密封療法を行った場合はテープ剤と同等の皮膚吸収率と考えますので、weakのロコイドも使用することがあります。
ステロイド注射薬
ケロイドが固い場合は注射してやわらかくすることも。
針を出し入れしてケロイド組織を砕き、その間に注入するイメージで。
圧迫・固定療法
創に対して平行方向の皮膚の収縮・伸展を繰り返すことが慢性炎症を生じやすくケロイド・肥厚性瘢痕の原因となります。
治療の予防は、圧迫固定して皮膚の収縮・伸展を予防もしくは、皮膚が収縮・伸展しやすい方向に沿ってテープを張って皮膚の張力を減圧させること。
テープを張る場合、腹部なら縦、胸部なら横、膝なら縦方向と皮膚の収縮・伸展方向に張ります。
レーザー治療
外科的治療
予防として、創部縫合時は真皮網状層に負荷がかからないようにするため①深筋層と筋膜を剥離して深筋膜をしっかり縫合。②浅筋層・脂肪層を縫合して自然に真皮同士が密着する状態に。その上で③真皮縫合と④表皮縫合を行います。
つまり、皮膚それぞれのレイヤーをしっかりかつ細かく縫合して真皮網状層に負担がかからないように意識します。
ケロイドは瘢痕切除により悪化することもあるので注意します。保存加療が無効な場合はケロイド切除も行いますが、傷が皮膚の収縮・伸展方向に重ならないようにZ形成なども加えます。場合によっては植皮もします。
放射線治療
重症なケロイドの方には予防目的も含めて行います。
まとめ
・ケロイド/肥厚性瘢痕の原因は真皮網状層にある
・創縫合時は真皮網状層に負担が少ないような縫合を心がける
・予防のためのテープ剤使用は皮膚の動く方向に沿って貼付する
・まずは保存加療から。重症なケロイドの場合や治療に難渋する場合は専門施設へ紹介を
以上です。
皮膚縫合は今後意識していこうかな♪
縫合時はセンイ筋膜をしっかり合わせ、皮下縫合でしっかり減張させてあげることが大事!
コメント