スポーツ現場で遭遇する脳震盪。
僕はスポーツ医の資格を取得して、大会スポーツドクターとしての活動はまだできてませんが、今後のために脳震盪についてまとめておきます。
脳震盪は決して軽視できない疾患ですので、注意しなければいけません。
脳震盪について
定義
スポーツ頭部外傷で最も多いのが脳震盪。
脳震盪の定義はさまざまなものがありますが‘‘外傷によって生じる精神状態の変化で、意識消失の有無を問わない‘‘と認識しておけばよいでしょう。
症状
主な症状は頭痛、ふらつき、めまい、集中力低下、力が出ないなど。
逆に意識障害、記憶障害、見当識障害、などの脳震盪ぽい症状は全体の1割程度とされています。
また症状は受傷直後に生じることもあれば、時間が経過してから生じることもあります。
経過
多くの場合7~10日程度で軽快しますが、20%程度で3週間以上症状が遷延化することがあります。
重症度だけでなく、小児や若年者は症状が遷延しやすいとされています。
脳震盪の再発
脳震盪を繰り返すといわるゆ‘‘脳震盪癖‘‘が付きやすくなります。
1回脳震盪を生じた場合、完全に回復してから競技復帰をした場合も、2回目以降は1回目に脳震盪になったときの衝撃より弱い衝撃で脳震盪がおこるとされます。
また、脳震盪経験者は再発リスクが2~4倍。
脳震盪の合併症
セカンドインパクト症候群
前回の脳震盪から完全に回復する前に2回目の脳震盪を起こした後、急速な脳腫脹・脳浮腫を生じるもの
脳血管の自動調節脳が損なわれるのが原因と考えられています。
よって、1回目の受傷から十分な期間を経ずに復帰した場合に起こりやすいとされます。
また特徴として、
・1回目、2回目ともに軽症の頭部外傷でも生じうる
・死亡率は30〜50%と非常に高い
・18歳未満のスポーツを行う若年者に多い
また、2回目の受傷時には急性硬膜下血腫を伴うことが多いと報告されています。
脳震盪後遺症
持続する頭痛、イライラ感、眩量,集中力の欠如、疲労感などが主な症状として出現。
数週間から1年間続くことがあります。単回の脳振盪であればおおむね2週間以内に正常化することが多いようです。
理解力、問題解決能力や運動機能の低下、性格変化、うつ状態、不眠、学力低下なども起こりうる。
1シーズン2回以上の脳震盪経験者で生じやすいとされます。
慢性外傷性脳損傷
長期間にわたり脳震盪を受けると、これが蓄積されて痴呆症状やパーキンソン症状が生じます。
ガッツ石松さんや具志堅さんとかのボクサーにみられるパンチ・ドランクが有名。
重症度分類とスポーツ復帰
ちょっと古いですが、‘‘アメリカ神経学アカデミー‘‘による管理指針(1997年)があります。
脳震盪の重症度分類と対処をおおまかに示してくれてます。
代表的な脳振盪症状である“混乱”の持続時間と意識消失の有無によって脳振盪を3段階に分類。復帰までの期間を当日、1週間、2週間、1カ月などと定めています。
しかし復帰期間が甘く、近年ではもっと厳格な復帰が望ましいとされます。
そして復帰期間に関しては難しい所。先ほど説明したセカンドインパクト症候群のリスクもあります。
ただし少なくともスポーツ復帰の原則として、脳震盪症状が完全消失してからが望ましい!!
といえます。
脳震盪後のスポーツ復帰に関してはまた次回詳しく解説していきます。
診断ツール~SCAT~
医療従事者用の脳震盪の評価基準ツールとして、SCAT(Sports Conccusion Assesment Tool)というものがあります。
最新版はSCAT5です(2022年8月時点)。
SCATは13歳以上の選手にのみ使用可能です。
5歳以上12歳以下には[Child SCAT5]がありますので、こちらを使いましょう。
また、脳震盪を疑ったときの評価については別途解説しようと思います。
頭部外傷10か条の提言~おまけ~
スポーツに関わるコーチや選手、家族の助けになることを目的に作成された「頭部外傷10か条の提言」というものがあります。
一般人向け。
専門知識がない一般の方でもわかりやすい、頭部外傷に関する現場での判断や対応について10の提言。
スポーツ関係者であれば一度読んでおくのがいいでしょう。
疲れたんで今日はここまで。でわでわ~。
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