医師三年目の時に小児病院をローテーションしましたが、それ以降小児を診察する機会はほとんどありません。
そろそろ忘れちゃいそう
一昔前は、先天性股関節脱臼とも呼ばれていましたが、近年では臼蓋形成不全、脱臼すべて含めて「発育性股関節形成不全=developmental dysplasia of the hip:DDH」と言います。
臼蓋形成不全が原因で脱臼するのか、脱臼があることで臼蓋形成不全になるのか疑問ですよね。
最近では、どちらかというと後者の考えが主流?のようです。
概論に関しては以下を参照いただきまして。
今回は、超音波検査で使用されるGraf分類についてまとめてみます。
Graf分類
臨床整形外科2020:55:506-11 小児股関節エコーアドバイスより引用
表 Graf分類(簡易)
小児整形外科テキストより
Graf法ではさまざまな状態の股関節を観察しています。
①撮像の目標が違う画像がある
②求心性という視点
③検査時の月齢
④α角
⑤β角
⑥臼蓋軟骨構造のエコー輝度
⑦骨頭と臼蓋軟骨の位置関係
上記のようなさまざまな視点が入り混じってます。
中でも大事なのが②Graf法での求心性の判断。
まずは骨頭の求心性があるかないかを評価します。
具体的には、タイプⅠ、Ⅱ、Ⅱcまでが求心性あり、タイプD、Ⅲ、Ⅳが求心性なしとなります。
問題は、ⅡcとDの判断が難しい。ここをβ角の測定で判断を分けることができます。
求心性の判断ができればあとは
・ⅠとⅡはα角の測定で、Ⅱaとbは月齢で分け
・ⅢaとⅢbは臼蓋軟骨構造のエコー輝度で、ⅢとⅣは骨頭と臼蓋軟骨の位置関係で分けられます。
基本手順
超音波像を映し出す上での基本手順
①被検児を側臥位とする
②中央に大転子を蝕知するポイントの直上で体軸に平行にプロ―べを当てる
③骨頭が最も大きく見えるポイントに前後に動かす
標準画像(スタンダードプレーン)の見つけ方
臼蓋中央を通る撮影像で、以下ポイント3つ
①腸骨下端が明瞭に描出される像を描出
②腸骨外縁が走査面に平行に描出される
③関節唇が明瞭に描出される
②が意外にむずかしい。平行にうつんないんす、、、
腸骨外縁が平行に映ってかつ、骨頭がしっかり描出されるポイントって結構ピンポイントなんだよね
以下、ポイントの図
治療方針
自分は下記を参考にしています。
typeⅠ⇒指導で様子見
typeⅡ、(D)⇒リーメンビューゲル
type(D)、Ⅲ、Ⅳ⇒持続牽引
上記イメージで考えています。
持続牽引自体は、小児専門病院じゃないと出来ないので、Xp上あきらかな脱臼があれば紹介します。
専門外の一般整形外科医がわかるレベルのXp異常があれば、ほぼ間違いなくtypeⅢ、Ⅳだと思いますので、Xpで脱臼が疑わしければ専門医に送るのがいいでしょう。
年配の先生だと、たまにXpでもあきらかな脱臼をリーメンビューゲルで治す先生もいらっしゃいますが、骨頭壊死や骨頭変形のリスクありますので、リーメンビューゲルにあまり頼らない方がいいと思います。
持続牽引は親が付き添わないといけないデメリットがありますが、選択肢を提示するのは大事。
まとめ
・まずは標準画像をしっかり出せるようになる
・求心性の評価ができるところからはじめましょう。
・明らかな脱臼は専門医への紹介がベスト
以上になります。
ここ数年で股関節脱臼がまた増えているみたいです。おくるみを推奨する小児科医が増えてきたせいでしょうか。
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