今回は、肉離れについて解説していきます。
急性期の病院だと手術がメインの業務になるので、あまり肉離れの治療に触れることってないですよね。
スポーツ分野って日常業務だけではなかなか学べない分野なので、自己学習が大切。
肉離れと
概要
肉離れとは受傷経験に基づいた通称名として使われています。
<定義(標準整形外科より)>
:急激な筋の過伸張、筋の過大な自動収縮。予期せぬ金の運動によって発生する、筋繊維または筋膜の断裂、過伸張、出血である。
=要約すると、自家筋力や介達外力で発生するということ
一方で、「筋挫傷」は直達外力により発生するものをいいます。
好発部位・競技
下肢の2関節筋に多く発生します。アスリートでは特に
第1位:ハムストリング(約40%)、第2位:下腿三頭筋(約20%)、第3位:大腿四頭筋(約10%)の順に多い。
好発競技として、第1位:陸上競技、第2位:サッカー、(第3位:フェンシング)
肉離れ3つのポイント
大事なポイント3つ
①損傷しやすい筋は「羽状筋」!
②損傷は「遠心性収縮」で起こりやすい!
③損傷は「筋腱移行部」に起こりやすい!
→「羽状筋とは?」はこちら。
分類
臨床的な分類とMRI所見の分類があります。
臨床的な分類
①軽傷(わずかな筋繊維の断裂)
②中等症(部分断裂)
③重症(完全断裂)
の3段階に分けられます。
MRI分類
MRI分類は、Boutin分類と奥脇分類(JISS分類)の2つあります。
Boutin分類は以前からありますが、最近は奥脇先生の分類がメジャーなようなのでこちらの分類を紹介します。
MRIでは、STIRとT2*強調画像が重要で、冠状断面で損傷部位・損傷型、横断面で損傷度を評価します。
奥脇分類(JISS分類)
<損傷型>
Ⅰ型=筋線維部損傷型で、筋線維部に高信号域を認める(出血型)
Ⅱ型=腱膜部損傷型で、明らかな腱膜の途絶を認める
Ⅲ型=筋腱付着部損傷型。
A-Ⅰ型、B-Ⅱ型、C-Ⅲ型
<損傷度>
1度=ほとんど損傷のない
2度=明らかな部分断裂を示す
3度=完全断裂
A-1度、B-2度、C-3度 A-B-C:STIR a-b-c:T2*強調画像
画像:日整会誌2021年95巻4号より
で表します。
損傷度は横断面で主に横断面で評価します。
STIRでわかりにくい場合は、T2*強調画像も合わせて評価します。
診察のポイント
診察所見は、受傷直後ほど重症度の推測に役立ちます。
触診では、圧痛部位や圧痛の程度を把握します。
また、他動的ストレッチ痛の有無と程度を評価することがポイントになります。
受傷時にストレッチ痛の有無を確認し、明らかなストレッチ痛がない場合はⅠ型と判断します。
一方で、ストレッチ痛が明らかな場合には、早期MRIも損傷型を確認する目的で検討します。
治療方針と競技復帰目安
治療方針と目安は以下。
Ⅰ型の場合=ストレッチとリハビリを許可して、約2週間で復帰を目指す。
Ⅱ型の場合=ストレッチは禁止してリハビリは行い、疼痛残存する場合は3,4週ごとにMRIでフォローしつつ、約6週で復帰を目指す。
Ⅲ型の場合=手術も検討。保存加療の場合は、Ⅱ型と同様にストレッチ禁止+リハビリを行いつつストレッチ痛とMRIを参考にしつつリハビリを進め、競技復帰は数か月
フォローとしてのポイントは、
ストレッチ痛の有無とMRIで腱膜の連続性の具合・信号強度の回復を評価しつつ、徐々にリハビリをすすめ、競技復帰を目指すこと。
MRIでは紡錘状の腱膜を目指します。
損傷型・損傷度や損傷筋によって復帰期間は結構異なるみたいですね。
日本臨床スポーツ医学会誌;vol2 No.2 2019より
今回は、以上になります。
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