2022年(第34回)整形外科専門医試験解答&解説【問1-25】

■ 問1
骨の構造について誤っているのはどれか。

a. 破骨細胞は骨表面の Howship 窩に存在する。
b. ハバース管の中には、神経・血管が通っている。
c. 骨細胞は骨皮質に最も多く存在する細胞である。
d. 骨基質蛋白の中で最も多いのは X 型コラーゲンである。
e. 骨基質に存在する非コラーゲン蛋白で最も多いのはオステオカルシンである。

正解:d

解説:
骨基質で最も多いコラーゲンは「I型コラーゲン」であり、「X型」は骨端軟骨板の石灰化帯に限局して出現する。

■ 問2
骨の発生について正しいものを2つ選べ。

a. 類骨は軟骨芽細胞により形成される。
b. 長管骨は軟骨内骨化により形成される。
c. 膜性骨化は間葉系細胞の集積から始まる。
d. 膜性骨化では肥大軟骨細胞が石灰化する。
e. 骨幹端部の成長軟骨板は横径成長の中心となる。

正解:b, c

解説:
類骨は「骨芽細胞」によって形成される。軟骨芽細胞ではない。d:類骨が骨化 肥大軟骨細胞は軟骨内骨化骨の発生には「膜性骨化」と「軟骨内骨化」の2種類があり、頭蓋骨などは前者、四肢骨は後者。

■ 問3
骨の修復について正しいものを2つ選べ。

a. 同種保存骨は骨再生作用が高い。
b. β-リン酸三カルシウムは骨誘導能を有する。
c. 骨折治癒過程の修復期では層板骨が形成される。
d. 骨形成蛋白(BMP)は未分化間葉系細胞を分化させる。
e. 一次骨癒合は仮骨を形成せずに骨癒合が完成する現象である。

正解:d, e

解説:
β-TCPには誘導能ではなく伝導能が主。
BMP(Bone Morphogenetic Protein)は未分化間葉系細胞に骨芽細胞への分化を促進。
一次癒合は仮骨を介さない特殊な癒合形式(緻密骨間の隙間が微小な場合など)。

■ 問4
正常関節軟骨について誤っているものを2つ選べ。

a. 血管やリンパ管が存在する。
b. 細胞外基質の主成分は水分である。
c. 構成する細胞は軟骨細胞のみである。
d. 軟骨膜、中間層、深層、石灰化層の4層に分類される。
e. 細胞外基質の主たるコラーゲンはⅡ型コラーゲンである。

正解:a, d

解説:
軟骨膜は関節軟骨には存在しない。軟骨の層は「表層、中間層、深層、石灰化層」で分類される。
関節軟骨には血管・神経・リンパ管は存在しない(無血管組織)。

■ 問5
脊髄について誤っているものを2つ選べ。

a. 脊髄から31対の脊髄神経が出ている。
b. 脳脊髄液は硬膜とクモ膜の間を流れる。
c. 外側脊髄視床路は痛覚と温度覚の伝導路である。
d. Adamkiewicz動脈は第2−5胸椎レベルより分枝する。
e. 胸髄の半側障害では,障害側と同側の下肢の運動障害が生じる。

正解:b, d

解説:
d:Adamkiewicz artery(artery of the lumbar enlargement)は,脊髄の下位半分の前脊髄動脈を栄養する動脈で,Th9とL1の間のレベルで(稀に,L2-3から),左側から分岐することが多い。左Th10からの分岐が最も多く,右側からの分岐は17∼30%である。

■ 問6
膝関節について誤っているのはどれか。

a. 伸展に伴い下腿は内旋する。
b. 階段昇降には95度以上の屈曲角度が必要である。
c. 歩行時に膝関節にかかる荷重は体重の2−3倍である。
d. 脛骨軸に対して関節面は約3度内側に傾いている。
e. 下肢機能軸は正常では膝関節のほぼ中央を通過する。

正解:a

解説:
膝の伸展に伴って生じるのは「外旋(screw home movement)」であり、内旋は誤り。

■ 問7
立位における腰椎-股関節-膝関節の関係について誤っているのはどれか。2つ選べ。

a. 腰椎が後弯すると骨盤が前傾する。
b. 骨盤が後傾すると股関節は過屈曲位となる。
c. 股関節が屈曲拘縮すると腰椎の前弯が強まる。
d. 内反股になると下肢機能軸は膝関節の内側を通過する。
e. 片側の股関節の罹患で脚長差が生じると腰椎側弯が生じる。

正解:a, b

解説:
腰椎が後弯(前弯の減少)すると骨盤は後傾する。
骨盤後傾により股関節は「伸展」方向になる。

■ 問8
腰下肢痛を訴える高齢患者に対する医療面接上の判断として正しいのはどれか。

a. 外傷がなければ椎体骨折は除外できる。
b. 発熱がなければ化膿性脊椎炎は除外できる。
c. 癌の既往がなければ転移性脊椎腫瘍は除外できる。
d. 歩いて入室していれば腰部脊柱管狭窄症は除外できる。
e. 腰椎屈曲により下肢痛が消失すれば下肢閉塞性動脈硬化症は除外できる。

正解:e

解説:
間欠性跛行の鑑別において、脊柱管狭窄症(屈曲で楽になる) vs 閉塞性動脈硬化症(姿勢無関係)の所見が重要。

■ 問9
超音波検査が有用でない疾患はどれか。

a. 関節リウマチ
b. 深部静脈血栓症
c. 前距腓靱帯損傷
d. 骨内ガングリオン
e. 先天性股関節脱臼

正解:d

解説:
骨内の病変は超音波では見えにくく、X線やMRIが基本。
筋・腱・靱帯・関節周囲には超音波が有用。

■ 問10
外傷後、肩・肘の運動不能で神経原性変化がある18歳男性の症例で誤っているものを2つ選べ。

a. 発汗障害を認める。
b. Horner徴候を認める。
c. 神経移植術が有効である。
d. 上腕外側の感覚障害を認める。
e. 前腕回外筋力の低下を認める。

正解:a, b

解説:引き抜き損傷
発汗障害やHorner症候群は下位頚髄(T1)障害でみられるが、本症例はC5-C6。
C5-C6の支配領域(上腕二頭筋・三角筋)の麻痺が主体。

■ 問11

34歳男性、右肩甲部の変形と前方挙上不能。病因として誤っているのはどれか。2つ選べ。

a. 三角筋拘縮症
b. 長胸神経麻痺
c. 四辺形間隙症候群
d. 肩甲切痕部ガングリオン
e. 頚部リンパ節郭清術による副神経損傷

正解:c, d

解説:前鋸筋麻痺による翼状肩甲骨
症状は「翼状肩甲骨(scapular winging)」で、長胸神経麻痺や副神経損傷が原因となる。
四辺形間隙症候群や肩甲切痕部ガングリオンはこの症状とは関連が乏しい。


■ 問12

18F-FDGを用いたPET-CTについて正しいものを2つ選べ。

a. 健常人でも脳や心筋に集積がみられる
b. 検査直前に10gブドウ糖入り補液を点滴する
c. 一回の検査での被曝は約100mSvである
d. フランシウムで標識したFDGを用いる
e. がん細胞は正常細胞よりもブドウ糖消費量が多い性質を利用

正解:a, e

解説:

  • FDGはブドウ糖類似物質で、脳・心筋・がん細胞に集積しやすい。
  • 被曝は10mSv程度。フランシウムではなくフッ素(18F)を使う。

■ 問13

脊髄造影検査について正しいのはどれか。2つ選べ。

a. 脊椎の動的因子を評価できる
b. イオン性水溶性造影剤を使用する
c. ヨードアレルギー患者には禁忌である
d. 脊椎手術予定患者では必須の検査である
e. 頚椎レベルの造影では後頭下穿刺法が一般的である

正解:a, c

解説:

  • 脊髄造影は脊椎動態の評価に有用だが、使用する造影剤にはヨードを含むためアレルギーがあると禁忌。

■ 問14

軟部腫瘍における免疫染色の組合せで誤っているのはどれか。

a. Ki-67 → 腫瘍増殖能
b. CD31 → 間葉系マーカー
c. S-100 → 神経系マーカー
d. SMA → 筋原性マーカー
e. EMA → 上皮系マーカー

正解:b

解説:

  • CD31は血管内皮細胞マーカーであり、間葉系ではない。
  • Ki-67=10番染色体長腕に存在する遺伝子により発現する蛋白質。これは細胞周期に関連する分子の1つで,休止期(G0)を除くすべての細胞核に発現するため,細胞増殖マーカーとして利用されています。Ki-67の発現は,病理組織切片において免疫組織染色により検索します

■ 問15

NSAIDsについて正しいのはどれか。

a. アセトアミノフェンが含まれる
b. フェニール酢酸系薬剤は鎮痛効果が弱い
c. 短期間の使用では腎機能障害は生じない
d. 神経障害性疼痛に対する第1選択薬である
e. 消化管傷害予防にプロトンポンプ阻害薬が有効

正解:e


■ 問16

壊死性筋膜炎後の右股関節離断術。幻肢痛に対して初めに投与すべき薬剤はどれか。

a. オキシコドン
b. バクロフェン
c. プレガバリン
d. ブプレノルフィン
e. メコバラミン

正解:c


■ 問17

人工関節に使用される素材について正しいのはどれか。

a. 一度固まったセメントは変形しない
b. ポリエチレン摩耗粉は骨溶解を生じない
c. デルタセラミックス人工骨頭は破損しない
d. チタン合金は軟部組織介在なしに骨と固着する
e. チタン合金はコバルトクロムより金属アレルギーを起こしやすい

正解:d

解説:

  • チタンは骨伝導性があり、生体親和性に優れる。金属アレルギーはコバルトクロムの方が多い。
  • ネットで某整形外科医が某K社のセラミック骨頭が割れる問題を指摘してました

■ 問18

セメントステム手術時、心血管系への影響軽減のために実施すべきことはどれか。3つ選べ。

a. 低血圧麻酔
b. 術前のDVT予防
c. 髄腔プラグによる閉鎖
d. 骨セメントの早期注入
e. 骨セメント注入前の髄腔内洗浄と乾燥

正解:b, c, e

解説:

  • セメント使用時のエンボリ予防に髄腔洗浄・乾燥、プラグ設置が重要。急速注入は逆効果。

■ 問19

整形外科手術の感染予防について正しいものを3つ選べ。

a. 術前に剃毛を行う
b. 術野はブラッシングする
c. 第一・第二世代セフェム系抗菌薬が推奨
d. 抗菌薬は執刀60分前〜直前に静注
e. 人工関節置換術後48時間までに抗菌薬終了

正解:c, d, e

解説:

  • 感染予防には第一世代セフェム(例:セファゾリン)を使用。剃毛は感染リスクを高めるため非推奨。

■ 問20

VTEおよびDVTについて正しいものを2つ選べ。

a. 血流うっ滞に起因するDVTはヒラメ静脈から始まる
b. VTEの90%はDVTを発生源とする
c. DVTでは必ず下肢疼痛を伴う
d. 人工股関節術後VTE予防には抗凝固療法が必須
e. DVT予防にアスピリンは用いられない

正解:a, b

解説:

  • VTE(肺塞栓など)はDVTが起点。ヒラメ静脈などの深部静脈が好発部位。
  • アスピリンはDVT予防に一定の効果がある。

■ 問21

49歳男性。2か月前に38度台の発熱、以後腰痛持続。体幹の可動性低下あり。最も考えられる疾患はどれか。

a. 変形性腰椎症
b. 化膿性脊椎炎
c. 強直性脊椎炎
d. 転移性脊椎腫瘍
e. 腰椎椎間板ヘルニア

正解:b

解説:

  • 発熱+持続する腰痛+可動域制限=化膿性脊椎炎を強く示唆。
  • 単純X線・MRI画像でも椎体終板の破壊が見られる。

■ 問22

48歳女性。右肘内側の有痛性腫瘤を自覚。問診上、有用性の低いものはどれか。

a. 朝のこわばりはないか
b. 肘関節の腫張はないか
c. 猫とかかわる機会はないか
d. 手の尺側に放散痛はないか
e. 前腕のしびれや感覚低下はないか

正解:a

解説:

  • 朝のこわばりはRA(関節リウマチ)評価には有用だが、本症例は有痛性腫瘤が主訴であり優先度は低い。

■ 問23

四肢の結核について正しいのはどれか。3つ選べ。

a. 手の結核性腱鞘滑膜炎は腫脹が強い
b. 初期の結核性関節炎のX線像は骨萎縮
c. 結核性股関節炎は関節滑膜への感染が多い
d. クォンティフェロンTBゴールドはBCG接種で陽性になる
e. 骨結核を診断した医師は保健所に結核発生届を提出する義務がある

正解:a, b, e

解説:

  • 結核は全身感染症であり、骨・関節の初期所見は萎縮。届け出義務あり。
  • クォンティフェロンはBCGに影響されにくい。
  • c:終末動脈の多い部位に塞栓を起こして潜在感染が成立するが、滑膜より骨に多い。標準整形外科には記載はない。股関節結核では、大腿骨頸部骨幹端の内側に病巣を形成するものが多い

■ 問24

MRSA保菌者に対する人工関節周囲感染予防で誤っているのはどれか。

a. 口腔除菌
b. 抗菌薬含有骨セメントの使用
c. バンコマイシンの周術期静脈投与
d. 希釈ポビドンヨード液による術野洗浄
e. イソプロピルアルコール含有消毒液による術野消毒

正解:a

解説:

  • MRSA対策としての「鼻腔除菌」は有効だが、「口腔除菌」は標準的対策ではない。

■ 問25

写真に示す皮膚病変と関節炎を合併する疾患について正しいものを3つ選べ。

a. この皮膚疾患の10–30%に関節炎を合併
b. 関節炎はDIP関節に多い
c. Jaccoud変形が特徴的
d. リウマトイド因子が陽性
e. X線像で傍脊柱骨化がみられる

正解:a, b, e

解説:乾癬性関節炎

  • 乾癬性関節炎の特徴。DIP関節障害、陰性RA因子、傍脊柱骨化が特徴。

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