先日外来で舟状月状骨離開の方が来ました。
橈骨遠位端骨折と合併するときはなかなかわかりにくい。
舟状月状骨解離とは
舟状月状骨解離は手根不安定症の一つ。手根不安定症の中で最も多く発生します。
手関節過度背屈位で受傷したり、橈骨遠位端骨折に合併するものもあります。
背側の舟状月状骨間靭帯損傷により生じます。
関節外科vol.28 no4 2009 手関節の解剖より
月状骨が背屈するいわゆるDISI(dorsal intercalated sgment instability)変形が生じます。
MB Orthop.32(4):79-84 ,2019 より
かならず生じるわけではなく、中には舟状月状骨靭帯損傷を生じてもDISI変形をきたさないものも。
諸説ありますが、月状骨が背屈変形するメカニズムははっきりしていないようです。
時間経過とともにSLAC変形を生じるので、変形が生じる前に加療したいところですね。
診断
身体所見
舟状月状骨関節背側部に圧痛があります。
また、第3伸筋区画と第4伸筋区画のくぼみ(手関節鏡挿入部の3-4ポータル部)の圧痛が特徴的ともいわれます。
母指・示指の軸圧方向への圧迫や手関節強制伸展下で自動回内時の疼痛が出現することも。
Scaphoid shift testの疼痛とClickの有無を調べましょう。
Scaphod shift test とは、母指で舟状骨結節部を圧迫しつつ手関節を尺屈位から橈屈させ、疼痛とクリックの有無を確認するテストです。
医道の日本2020年5月号 外傷整復道場より
画像診断
X線
舟状骨と月状骨の間(scapholunate gap)が3㎜以上だと明らか。
整形外科surgical technique vol.4 no.3 2014より
正面像ではっきりしない場合、手関節尺屈位像での撮影が重要。
また、舟状月状骨間の開大がない場合もあるので、舟状骨の背屈位(DISI変形)を見るのも大事。
DISI変形の評価
・Radiolunate angle=橈骨長軸と月状骨水平軸のなす角
・Scapholunate angle=舟状骨長軸と舟状骨水平軸のなす角
・Capitolunatea angle =橈骨長軸と月状骨水平軸のなす角
カンファレンス必携より
僕はRadiolunate angleで評価しています。
その他画像診断
関節造影はX線では現れない靭帯損傷の評価に有用。
MRIでの評価を行うこともありますが、靭帯損傷の評価は分かりにくいこともあります。
慣れている施設であれば関節鏡での診断は有用です。
治療法(おまけ)
○新鮮例で軽度舟状月状骨損傷例
⇒外固定または整復+pinning 固定(+靭帯縫合術)
○舟状月状骨開大例、不安定例
⇒靭帯再建術、移植術(Linscheid法、Taleisnik法、Brunelli法 etc)、など
を行います。
治療方針の決定にはGarcia-Elias分類を参考にします。
○Garcia-Elias分類
StageI:部分靱帯損傷
StageⅡ:修復可能な靱帯損傷
StageⅢ:修復可能であるがアライメント異常のない靱帯損傷
StageⅣ:修復不可能なうえアライメント異常は整復可能な靱帯損傷
StageⅤ:アライメント整復も不可能であるものの軟骨は正常なSL靱帯損傷
StageⅥ:SLACwrist
MB Orthop Vol.32 No.4 2019より
マニアック過ぎて覚える必要はないと思いますし、僕自身多分手術することはないでしょう。
コメント