2022年(第34回)整形外科専門医試験解答【問51-75】

■ 問51(画像問題)

18歳の男性。1年前にバイクで転倒して左手をついた。受傷時には異常を指摘されなかった。手関節痛が続くため受診した。左手関節単純X線正面像を示す。この症例について誤っているのはどれか。

a. 手根不安定症をきたす。
b. ギプス固定をまず試みる。
c. 嗅ぎタバコ窩に圧痛がある。
d. 長期的には変形性手関節症に進展する。
e. 手関節尺屈位でのX線撮影が診断に有効である。

正解:b

■ 問52(画像問題)

8歳の女児。1週間前から上気道炎症状が続いていた。昨日から頚部の変形と運動時痛が出現し受診。神経学的所見はなし。頚椎単純X線正面像およびCT水平断像を示す。まず行うべき治療として適切でないのはどれか(2つ選べ)。

a. 安静指示
b. 鎮痛薬の処方
c. 頚椎介達牽引
d. 頚椎カラー装着
e. ハローベスト装着

正解:c,e

解説:環軸椎回旋位固定(AARF)

🧠 補足:AARF(atlantoaxial rotatory fixation)分類(Fielding分類)

特徴
Type I回旋のみ(靭帯損傷なし) → 保存療法が原則
Type II回旋+前方移動(靭帯損傷あり)
Type III回旋+後方移動
Type IV回旋+側方脱臼(稀)

■ 問53

C6/7高位の巨大正中椎間板ヘルニアで生じうるのはどれか。2つ選べ。

a. 三角筋筋力低下
b. 母指の感覚障害
c. 膝蓋腱反射亢進
d. 上腕二頭筋腱反射亢進
e. Finger escape sign(指離れ徴候)

正解:c, e

■ 問54

脊柱側弯症について誤っているのはどれか。3つ選べ。

a. 思春期特発性側弯症は男児に多い。
b. Cobb角が10度以上のものを側弯症と呼ぶ。
c. 10歳未満で発症した側弯を早期発症側弯症と呼ぶ。
d. 特発性側弯症では胸椎と腰椎ともに右凸のカーブが多い。
e. Cobb角の大きさに関わらず成長完了とともに進行は停止する。

正解:a, d, e

解説:

a. 女児に多く(約4~5倍)、進行もしやすいのは女児。

d. 胸椎:右凸が多いが、腰椎は左凸が多い。また、左凸胸椎カーブは病的側弯の可能性がある。

e. 成長完了後でもCobb角が大きい場合(>50°)は進行する可能性がある。

■ 問55

胸椎後縦靱帯骨化症について正しいのはどれか。2つ選べ。

a. 男性の発生率が高い。
b. 好発部位は上から中位胸椎である。
c. 日本人よりも欧米人の発生率が高い。
d. 後縦靱帯骨化に遺伝的素因は関連しない。
e. 靱帯骨化の形式は、軟骨内骨化と結合織内骨化の2種類が関与している。

正解:a, e

解説:

a:後縦靭帯自体は男性が女性の2倍と多いが、胸椎に限っては女性に多い。頚椎OPLLは男性に多い。

■ 問56(画像問題)

83歳の女性。左下肢痛を訴えて来院。腰椎MRI(T2強調像)で左側傍正中矢状断および水平断、正中矢状断の所見が提示されている。正しいものを1つ選べ。

a. 左膝蓋腱反射が低下する。
b. Babinski反射が陽性となる。
c. 脊柱管内のヘルニアである。
d. 下腿三頭筋の筋力低下を生じる。
e. 下腿後面から足底にかけて感覚鈍麻が生じる。

正解:a

■ 問57

腰部脊柱管狭窄症について正しいのはどれか。

a. 物理療法の有用性は低い。
b. 馬尾障害は自然寛解する。
c. 頚椎と腰椎の狭窄は関連しない。
d. 姿勢変化による症状の増減はない。
e. 馬尾型間欠性跛行は下肢痛を訴える。

正解:a

■ 問58

腰痛について誤っているのはどれか。2つ選べ。

a. コルセットは腰痛予防に有効である。
b. 慢性腰痛に対する運動療法は無効である。
c. 急性腰痛に対するNSAIDsは有用である。
d. 腰痛の遷延には心理社会因子が強く関連する。
e. 慢性腰痛は発症からの期間が3か月以上継続するものを指す。

正解:a, b

■ 問59

脊椎に発生する髄膜腫の特徴はどれか。2つ選べ。

a. 胸椎高位に好発
b. シュワン細胞由来
c. 核の柵状配列(palisading)
d. MRI T2強調像でのtarget sign
e. 腫瘍内の石灰化(砂粒体psammoma body)

正解:a, e

解説:髄膜腫

b → 誤り:神経鞘腫がシュワン細胞由来であり、髄膜腫はくも膜由来。
c → 誤り:これも神経鞘腫の特徴。
d → 誤り:target signは神経鞘腫や神経線維腫で見られるMRI所見。

■ 問60

原発性脊椎腫瘍について正しいのはどれか。2つ選べ。

a. 脊索腫は胸椎部に多く発生する。
b. 血管腫は脊椎後方要素に発生する。
c. 類骨骨腫は疼痛による側弯を呈する。
d. 骨巨細胞腫は単純X線像ですだれ状陰影を認める。
e. ランゲルハンス細胞組織球症ではCalvé扁平椎を来す。

正解:c, e

解説:原発性脊椎腫瘍

  • a → 誤り:脊索腫は仙骨・頭蓋底に好発
  • b → 誤り:血管腫は椎体内に多い(後方要素ではない)。
  • d → 誤り:すだれ状陰影は**軟部腫瘍の石灰化(骨肉腫など)**にみられる。

■ 問61

小児の股関節疾患について正しいのはどれか.2つ選べ.

a. Perthes病では膝痛を訴えない。
b. 脱臼骨頭はHilgenreiner線より遠位にある。
c. 乳児期の発育性股関節形成不全は関節包内脱臼を呈する。
d. 大腿骨頭すべり症の傾斜角の少ないものには内固定を行う。
e. 股関節に可動域制限のある大腿骨頭すべり症の治療は可動域訓練である。


正解:c, d

解説:

  • a:誤り
     Perthes病は膝痛のみを訴えることがあり、見逃されやすい。膝痛≠膝疾患に注意。
  • b:誤り
     発育性股関節形成不全での脱臼骨頭はHilgenreiner線より近位に位置する。
  • c:正しい
     乳児期の発育性股関節形成不全(DDH)は関節包内脱臼が基本。整復位が保ちやすい。
  • d:正しい
     大腿骨頭すべり症は軽度の傾斜角でも固定術が行われる(再転位・進行予防のため)。
  • e:誤り
     可動域制限を伴うすべり症に対しては整復や内固定が必要であり、単なる可動域訓練は禁忌となる場合がある。

■ 問62

大腿骨頭壊死症について正しいのはどれか.

a. 壊死域は徐々に拡大する。
b. 壊死の発生に遺伝要因は関与しない。
c. 骨壊死の病理所見がなければ診断できない。
d. 片側に見つかり,次いで対側に壊死が発生して両側例となる。
e. 大腿骨頭に次いで多い壊死発生部位は大腿骨遠位骨端である。


正解:e

解説:大腿骨頭壊死症

b:部の研究で遺伝的素因(例:アルコール代謝酵素や凝固系)との関与が指摘されている。


■ 問63

28歳男性。1か月前より左股関節痛あり。ネフローゼ症候群でステロイド治療中。X線所見あり。正しいのはどれか。2つ選べ。

a. 関節温存手術の適応はない。
b. 症候性大腿骨頭壊死症である。
c. 大腿骨頭壊死症のstage 3である。
d. MRI T1強調像では帯状低信号像を呈する。
e. 骨壊死が発生した時に左股関節痛が生じた。


正解:c, d

解説:特発性大腿骨頭壊死

■ 問64

人工股関節全置換術後の関節安定性に影響しないのはどれか。

a. 原疾患
b. 骨頭サイズ
c. 手術アプローチ
d. ステム髄腔内形状
e. ソケットの設置方向

正解:d


■ 問65

大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)の画像所見に特徴的なのはどれか。2つ選べ。

a. Klein line
b. capital drop
c. Shenton line
d. herniation pit
e. cross-over sign

正解:d, e

解説:大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)

  • a:Klein lineは大腿骨頭すべり症の診断に使用。。
  • b:capital drop(骨頭下落)は発育性股関節形成不全などに用いる。
  • c:Shenton lineは股関節脱臼の診断に使う線。
  • d:herniation pitcam型FAIの特徴的所見(大腿骨頚部前外側に小嚢胞)。
  • e:cross-over signpincer型FAIのX線所見(寛骨臼前後縁の交差)。

■ 問66

膝周囲骨切り術について正しいのはどれか。

a. 外反膝に対して脛骨近位部での内反骨切り術を行う。
b. 内反膝に対して大腿骨顆上部での外反骨切り術を行う。
c. 膝蓋大腿関節症の難治例に対して脛骨粗面内方移動術を行う。
d. 大腿骨内側顆特発性骨壊死に対して高位脛骨骨切り術を行う。
e. 高位脛骨骨切り術では術後の下肢機能軸が膝関節中央を通過するようにする。

正解:d


■ 問67

変形性膝関節症の保存療法について正しいのはどれか。3つ選べ。

a. 定期的な有酸素運動を行う。
b. 患肢とは反対側の手で杖・松葉杖を使用する。
c. 非薬物療法あるいは薬物療法のどちらかを行う。
d. 内側型変形性膝関節症では外側を高くした楔状足底板を使用する。
e. ヒアルロン酸関節内注射は副腎皮質ステロイド関節内注射より症状緩和時間が短い。

正解:a, b, d

■ 問68

膝関節特発性骨壊死について誤っているのはどれか。

a. 両側性が多い。
b. 60歳以上の女性に多い。
c. 大腿骨内側顆に好発する。
d. 病巣が小さい例は保存療法で予後良好である。
e. 病巣が大きい例は人工膝関節置換術の良い適応である。

正解:a

解説:膝関節特発性骨壊死

  • a:誤り。特発性骨壊死(Spontaneous Osteonecrosis of the Knee, SONK)は片側性がほとんど

■ 問69

足部・足関節の難治性疲労骨折の好発部位はどれか。2つ選べ。

選択肢未記載のため、典型的な候補部位を挙げます:

正解:b,d

  • 舟状骨(navicular)
  • 第5中足骨近位部(Jones骨折部位)

■ 問70

55歳女性。糖尿病既往あり。右足の腫脹。X線所見より誤っているのはどれか。

a. 著明な疼痛を認める。
b. 血行障害を伴う。
c. 末梢優位の感覚障害を認める。
d. 血液検査で炎症所見が乏しい。
e. 単純X線像で骨破壊像と形成像が混在する。

正解:a

解説:Charcot関節(糖尿病性神経関節症)


■ 問71

動脈損傷について正しいのはどれか。3つ選べ。

a. 上肢では側副血行路が発達している。
b. 感覚障害は解剖学的皮膚感覚支配図と一致する。
c. 血行再建の最適期は常温下で6−8時間以内である。
d. 仮性動脈瘤の壁には組織学的な動脈壁構造がみられる。
e. 主幹動脈の損傷による末梢部の壊死は上肢より下肢で起きやすい。

正解:a, c, e

解説:

  • d:誤り → 仮性動脈瘤には正常な動脈壁構造(内膜・中膜・外膜)がない

■ 問72

ロッキングプレートについて誤っているのはどれか。2つ選べ。

a. 抜釘が容易である。
b. 角度安定性が高い。
c. 仮骨形成なしに骨癒合する。
d. プレート直下の骨膜血流を温存することができる。
e. 骨粗鬆症など骨質が弱い場合でも一定の固定力を得ることができる。

正解:a, c

■ 問73

相対的安定性による固定が望ましい骨折はどれか.2つ選べ.

a. Hoffa骨折
b. 前腕骨幹部横骨折
c. 上腕骨骨幹部粉砕骨折
d. 脛骨外側顆プラトー骨折
e. 大腿骨転子部4-part骨折

正解:c, e

解説:

  • 相対的安定性とは:マイクロモーションを許容することで**仮骨形成(間接癒合)**を促す固定。IM nailingやブリッジプレート法が代表。髄内固定法に代表される,骨折部の癒合を妨げない程度の動きを残した固定法。
  • 絶対的安定性=プレート内固定に代表される、骨折部を正確に整復し,骨片間圧迫による強固な固定法。
  • a:Hoffa骨折(大腿骨顆部の矢状断裂) → 関節内骨折。**絶対的安定性(解剖学的整復+ラグスクリュー)**が必要。
  • b:前腕骨幹部横骨折 → 解剖学的整復・剛性固定が必要。絶対的安定性が基本。
  • c:正しい。上腕骨骨幹部粉砕骨折 → 解剖整復困難。**相対的安定性(髄内釘やブリッジプレート)**が適。
  • d:脛骨外側顆骨折 → 関節面の整復が必要。絶対的安定性が原則。
  • e:正しい。大腿骨転子部4-part骨折 → 粉砕例では髄内釘やDHSで相対的安定性を目指す。

■ 問74

開放骨折に対する治療として正しいのはどれか.3つ選べ.

a. デブリドマンを創縁から中心へ向かって行った。
b. Gustilo typeⅢ-Aに対して,生理食塩水を用いて高圧洗浄を行った。
c. Gustilo typeⅡに対して,創部から皮膚切開を延長し色調の不良な筋肉を切除した。
d. Gustilo typeⅢ-Bの皮膚皮下組織欠損に対して,上皮化するまで持続陰圧吸引療法を続けた。
e. 適切なデブリドマンを行えたが皮膚の緊張が強かったため,開放創は閉鎖せず持続陰圧吸引療法を行った。

正解:a,c, e

■ 問75

骨粗鬆症による新鮮椎体骨折を確定診断するために単純X線撮影の次に行うべき検査はどれか。

a. CT
b. MRI
c. 断層撮影
d. 超音波検査
e. 骨シンチグラフィー

正解:b

解説:

  • MRI(特にT1・STIR画像)は新鮮骨折か陳旧性かの判断に極めて有用。
  • 骨髄浮腫像や椎体内の低信号帯(T1)と高信号帯(STIR)で骨折の急性期所見を確認できる。
  • CTは骨折の詳細な構造評価に有効だが、新旧の判別は困難。
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