問1
骨の構造について誤っているのはどれか。
a. 骨髄は生後唯一の造血組織となる
b. 骨髄には造血細胞と骨髄間質細胞がある
c. 皮質骨にはハバース管やオステオンがある
d. 成長軟骨板は軟骨細胞と軟骨基質から構成される
e. 海綿骨にはフォルクマン管と呼ばれる半円柱構造がある。
正解: e
解説:
- 骨髄は生後唯一の造血組織となる 。
- a:胎生期に肝臓やリンパなどで造血を行っている時期もあるが、出生後24週くらいで骨髄に完全移行。
問2
破骨細胞について正しいのはどれか、3つ選べ。
a. 巨大な多核細胞である
b. 単球・マクロファージ系の前駆細胞に由来する
c. 副甲状腺ホルモン (PTH)により活性が抑制される
d. 酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ (TRAP)活性が低い
e. RANKL(receptor activator of NF-kB ligand)によって活性化される。
正解: a, b, e
解説:
- 副甲状腺ホルモン (PTH)により破骨細胞の活性は促進される 。
- 酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ (TRAP)活性は破骨細胞に高く認められる 。
問3
骨折の修復について正しいのはどれか。2つ選べ。
a. 骨折直後,骨折部位はアルカローシスに陥る
b. 骨折に伴う血腫は、局所での骨形成を阻害する
c. リモデリング期では、線維性骨が層板骨に置換される
d. 一次骨癒合とは、仮骨を形成せずに骨癒合することである
e. 二次骨癒合とは、瘢痕形成によって骨癒合することである。
正解: c, d
解説:
- 骨折直後、骨折部位は炎症反応によりアシドーシスに陥る 。
- 骨折に伴う血腫は、局所での骨形成を促進する 。
- 二次骨癒合とは、仮骨形成によって骨癒合することであり、瘢痕形成とは異なる 。
問4
TFCC(三角線維軟骨複合体)を構成しないのはどれか。
a. 三角骨
b. 関節円板
c. 尺側側副靱帯
d. 掌側橈尺靱帯
e. 背側橈尺靱帯
正解: a
問5
神経について誤っているのはどれか。2つ選べ。
a. 末梢神経のC線維は主に運動に関与する
b. 有髄線維の髄鞘の切れ目を Ranvier 絞輪という
c. 有髄線維は無髄線維よりも興奮伝達速度が速い
d. 運動神経終末のシナプス小胞は多量のノルアドレナリンを含む
e. 脊髄は内側の灰白質 gray matter, 外側の白質 white matter に分類される。
正解: a, d
解説:
- 末梢神経のC線維は主に痛覚や温覚などの感覚に関与。
- 運動神経終末のシナプス小胞は、主にアセチルコリンを含む 。
問6
骨軟化症について正しいのはどれか、3つ選べ。
a. 低リン血症は骨軟化症の原因となる
b. 骨痛は骨軟化症の症状の一つである
c. FGF23産生腫瘍は低リン血症を引き起こす
d. ビタミンD欠乏性骨軟化症は偏食では生じない
e. 血清25(OH)Dが 30 ng/mL 未満であればビタミンD欠乏と判定される。
正解: a, b, c
解説:
- 血清25(OH)D濃度が30 ng/ml以上をビタミンD充足状態と判定
- 血清25(OH)D濃度が30 ng/ml未満をビタミンD非充足状態と判定
- 血清25(OH)D濃度が20 ng/ml 以上30 ng/ml未満をビタミンD不足と判定
- 血清25(OH)D濃度が20 ng/ml未満をビタミンD欠乏と判定
問7
腰椎一股関節一膝関節の関係について正しいものはどれか。3つ選べ。
a. 腰椎が後弯すると骨盤が前傾する
b. 骨盤が後傾すると股関節は過屈曲位となる
c. 股関節が屈曲拘縮すると腰椎の前弯が強まる
d. 外反股の場合、立位の下肢機能軸は膝関節の外側を通る
e. 片側の股関節の罹患で脚長差が生じると腰椎側弯が生じる。
正解: c, d, e
解説:
- 腰椎が後弯すると骨盤は後傾する 。
- 骨盤が後傾すると股関節は相対的に伸展位となる 。
問8
頚椎症性脊髄症の臨床症状の評価基準として正しいのはどれか。3つ選べ。
a. SF-36
b. JOACMEQ
c. Nurick grade
d. Oswestry Disability Index
e. Rolland-Morris Disability Questionnaire
正解: a, b, c
解説:
- a:SF-36®(MOS Short-Form 36-Item Health Survey)は世界で最も広く使われている自 己報告式の健康状態調査票。特定の疾患や症状などに特有な健康状態ではなく、包 括的な健康概念を、8つの領域によって測定するように組み立てられている。わずか36項目の質問、5分程度の回答時間で包括的な健康度を測定するので、さまざまな疾患を持つ患者の健康度の記述,治療やケアのアウトカム評価に使用される
- b:日本整形外科学会頚部脊髄症評価質問票(JOACMEQ)
- c:Nurick scale=頚髄症による脊髄症状をスコア化した評価法。
- d:Oswestry Disability Indexは世界で最も広く使用されてきた患者立脚型の腰痛疾患に対する疾患特異的評価法のひとつ
- e:RDQ(Roland-Morris Disability Questionnaire) =腰痛による日常生活の障害を患者自身が評価する尺度である
問9
37歳の女性、主訴は腰背部痛. 数年前から痛みの寛緩と増悪を繰り返している。疼痛コントロールはNSAIDs で比較的良好であるが、長時間寝ていると痛みが出たり、寝返りで目を醒ましたりすることがある。靴下が履きにくい以外にADLや就労の制限はない。来院時の単純X線像を示す、血液検査では白血球7,560, CRP 2.32 mg/dL, リウマトイド因子 13.9IU/mL,赤沈86mm/1時間がみられた。想起すべき疾患はどれか。3つ選べ。

a. 乾癬性脊椎炎
b. 強直性脊椎炎
c. SAPHO症候群
d. 強直性脊椎骨増殖症
e. びまん性脊椎骨増殖症
正解: a, b, c
解説:
- 強直性脊椎骨増殖症 とびまん性脊椎骨増殖症 は炎症性疾患ではない。
問10
深部腱反射の支配髄節について誤っているのはどれか。2つ選べ。
支配髄節 | ||
a | 上腕二頭筋腱反射 | C3~C4 |
b | 腕橈骨筋反射 | C5-C6 |
c | 上腕三頭筋腱反射 | C6-C8 |
d | 膝蓋腱反射 | L5-S1 |
e | アキレス腱反射 | S1~S2 |
正解: a, d
解説:
- 上腕二頭筋腱反射の支配髄節はC5-C6である 。
- 膝蓋腱反射の支配髄節はL2-L4である 。
問11
針筋電図検査の最大随意運動時において損傷・疾患の原因が神経原性と筋原性との鑑別に有用な所見はどれか。
a. 干渉波
b. 終板電位
c. 陽性鋭波
d. 線維自発電位
e. ミオトニー放電
正解: a
解説: 最大随意運動時の針筋電図検査において、干渉波は神経原性障害と筋原性障害の鑑別に有用である。神経原性障害では干渉波のパターンが減少または消失し、筋原性障害ではMUP(運動単位電位)の持続は短縮し干渉波の振幅が低下する。b:終盤電位は針がたまたま神経筋接合部に当たった時に見られる電位。健常者でも認める。c、d:脱神経電位でみられる e:筋強直性ジストロフィ症を含むミオトニー疾患にみられる。ミオトニーとは随意的、機械的、あるいは電気的に生じた筋収縮が弛緩しにくい筋肉が強直した状態。
問12
頭蓋底陥入症のX線学的指標として誤っているのはどれか。
a. Bimastoid line
b. Calvé line
c. Chamberlain line
d. McGregor line
e. McRae line
正解: b
解説:
b. Calvé line=脊椎の圧迫骨折における椎体の楔状変形を評価する際に用いられる指標
問13
超音波検査について正しいのはどれか。2つ選べ。
a. 骨の内部が描出できる。
b. 筋、腱の評価ができる。
c. 先天性股関節脱臼の診断に有用である。
d. 周波数が高くなるに従い解像度が悪くなる。
e. 周波数が高くなるに従い体内での減衰が起こりにくい。
正解: b, c
解説: 周波数が高くなると解像度は向上するが、体内での減衰も起こりやすくなる。
問14
人工関節周囲感染を疑う場合の対応について正しいのはどれか。2つ選べ。
a. 病理診断検体は可能な限り骨髄から採取する。
b. 抗菌薬を開始する前に細菌培養検体を採取する。
c. 感染局所の細菌培養検体は2か所から採取する。
d. 人工関節周囲組織1か所で細菌が同定された場合、起炎菌であると考える。
e. 人工関節に交通する瘻孔は細菌培養検査陰性でも感染の存在を強く示唆する。
正解: b, e
解説: 感染局所の細菌培養検体は、偽陽性を避けるため、通常複数箇所(5-6か所程度)から採取することが推奨される。1か所のみでの細菌同定はコンタミネーションの可能性も考慮する必要がある。病理診断検体は、骨髄よりも感染が疑われる関節周囲組織やインプラント周囲組織から採取する。
問15
非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)について正しいのはどれか。
a. 抗凝固薬の効果を減弱する.
b. 慢性腰痛症に対する使用は推奨されない。
c. がん性疼痛に対してオピオイドとの併用を避ける。
d. シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)選択阻害薬は腎機能障害がない。
e. レニン・アンジオテンシン系阻害薬、利尿薬との3剤併用は Triple Whammy と呼ばれる。
正解: e
解説:
a:NSAIDsは抗凝固薬の効果を増強し、出血リスクを高めることがある。
e:薬剤性誘発性急性腎障害の誘因となる。直訳で3段攻撃。
問16
オピオイド鎮痛薬の副作用について誤っているのはどれか。
a. 下痢
b. 眠気
c. せん妄
d. そう痒
e. 悪心・嘔吐
正解: a
解説: オピオイド鎮痛薬の一般的な副作用には、便秘(下痢ではない)、眠気、せん妄、そう痒感、悪心・嘔吐などがある。消化管運動の抑制により便秘が問題となることが多い。
問17
同種骨移植について誤っているのはどれか。
a. 各医療施設でbone bank を設置することができる。
b. 細胞成分が破壊されて免疫反応が低い状態で使用できる。
c. 採取骨をマイナス18° 以下で凍結保管し解凍して使用する。
d. 実施に際しては日本組織移植学会のガイドラインを遵守する。
e. 保険診療 K059骨移植術において生体と非生体の同種骨は区別される。
正解: c
解説: 同種骨移植に使用される骨は、細胞成分を破壊して免疫反応を低減させた状態で使用される。保険診療上、生体と非生体の同種骨は区別される。採取骨の凍結保管は、通常マイナス80℃以下や液体窒素中で行われる。
問18
気管挿管困難が予測される疾患はどれか。3つ選べ。
a. 顔面神経麻痺
b. halo-vest 装着
c. 頚椎後縦靭帯骨化症
d. 環軸関節亜脱臼垂直型
e. 環軸関節亜脱臼前方型
正解: b, c, d
解説: 気管挿管困難が予測されるのは、頚椎の可動域制限や不安定性が存在する状態である。halo-vest装着時は頚椎の固定により可動域が制限される 。頚椎後縦靭帯骨化症や環軸関節亜脱臼(垂直型)は、頚髄へのリスクや気道確保の困難を伴うため、挿管が困難となる場合がある 。顔面神経麻痺は気管挿管困難とは直接関連しない。
問19
骨・関節術後感染予防ガイドライン 2015に記載されているのはどれか、2つ選べ。
a. SSI 予防のため手術前日までに術野の剃毛を済ませておく。
b. 術中にセファゾリンを使用する場合は6時間ごとに追加投与する。
c. 抗菌薬含有生理食塩水による創部の洗浄はSSI発生率を低下させる。
d. 創部に閉鎖性吸引ドレーンを留置した場合は48時間以内に抜去する。
e. 術後の血糖値を<200mg/dL にコントロールすることは SSI 発生率を低下させる。
正解: d, e
解説: 骨・関節術後感染予防ガイドライン2015では、術野の剃毛は手術直前に行うべきであり、手術前日までに行うことは推奨されない。術中抗菌薬の追加投与は、セファゾリンであれば半減期を考慮し、通常2時間ごとまたは出血量に応じて行われる。抗菌薬含有生理食塩水による創部洗浄は、SSI発生率低下の明確なエビデンスはない。閉鎖性吸引ドレーンは、SSIリスクを減らすため48時間以内に抜去することが推奨される。術後の血糖値コントロールはSSI発生率低下に寄与するとされる 。
問20
深部静脈血栓症について誤っているのはどれか。2つ選べ。
a. 外傷はリスク因子となる。
b. D・ダイマーは偽陰性率が高い。
c. 腓腹部の把握痛を Homans 徴候という。
d. 浮遊血栓の場合は臨床症状を呈しにくい。
e. Virchowの3徴のひとつに静脈内皮障害がある.
正解: b, c
解説:
b:D-ダイマーはDVTの除外診断に有用であり、偽陰性率は低い。
c:下肢伸展位で足関節を背屈させたときに腓腹部に痛みが生じる徴候
d:浮遊血栓(floating thrombus)は、血管壁に完全に付着しておらず、血管内で揺れ動いている血栓を指す。このような血栓は、血流によって容易に剥がれ落ち、肺塞栓などの重篤な合併症を引き起こすリスクが高いが、血流を完全に閉塞していないため、下肢自体の臨床症状(腫脹や疼痛)は呈しにくい。
e:Virchowの3徴とは、血液凝固能亢進、血流うっ滞、血管内皮障害である 。
問21
化膿性脊椎炎について正しいのはどれか。
a. 確定診断はMRIで行う。
b. 診断後は早期に手術を行う。
c. 起炎菌によって手術方法を変える。
d. 感染が沈静化すれば手術は不要である。
e. 手術療法として前方進入による病巣掻爬と骨移植術を行う。
正解: e
解説:
前方からアプローチすることで、感染源である椎間板や壊死した椎体を直接かつ広範囲に除去することが可能
問22
人工股関節周囲感染の診断に関し、検査項目で誤っているのはどれか。
a. 赤沈
b. 血清 CRP
c. D・ダイマー
d. 関節液糖値
e. 関節液白血球数
正解: d
問23
結核性脊椎炎について正しいのはどれか。3つ選べ。
a. 下位頚椎から上位胸椎レベルの罹患が多い。
b. Gd 造影MRIでのrim enhancement が診断に役立つ。
c. 椎骨静脈叢(Batson 静脈叢)の血行を介して感染する。
d. 結核全般に関する我が国の罹患率は欧米先進諸国と比較して低い。
e. インターフェロン遊離試験はツベルクリン反応より特異度が高い。
正解: b, c, e
解説:
a:結核性脊椎炎は中下位~腰椎に好発。d:我が国の結核罹患率は欧米先進諸国と比較して高い傾向にある。
問24
薬剤耐性菌感染症について誤っているのはどれか。
a. MRSA 感染は医療従事者が媒介する可能性に留意する。
b. MRSAはメチシリンだけでなく複数の抗菌薬に耐性をしめす。
c. VRE(vancomycin-resistant enterococci)は多剤耐性菌である。
d. 医療従事者に対してMRSAのスクリーニングを行うべきである。
e. 多剤耐性緑膿菌感染症に対して、短期強力型の抗菌薬治療を行う。
正解: d
問25
35歳の男性、5年前から腰痛が続いている。特に朝方に痛みが強く、運動により軽減する。腰椎単純X線正面像およびCT 冠状断像を示す。治療方針について正しいのはどれか。3つ選べ。

a. 禁煙を指導する。
b. IL-6阻害薬投与を考慮する。
c. 疼痛が強いときには安静を指示する。
d. メソトレキサート単独投与は体軸性病変に対して無効である。
e. NSAIDs(non-steroid anti-inflammatory drugs)投与は靭帯骨化進行を抑制する。
正解: a, d, e
解説: 脊椎関節炎
禁煙は脊椎関節炎の進行抑制に重要である 。疼痛が強いときでも、運動療法を継続することが推奨される。メソトレキサートは体軸性病変に対する効果は乏しいとされている 。NSAIDsは症状緩和だけでなく、靭帯骨化の進行を抑制する効果が期待される 。IL-6阻害薬は、脊椎関節炎の治療薬としては一般的ではなく、IL-17阻害薬やTNFα阻害薬が用いられる。
問26
脊椎関節炎の臨床所見ではないのはどれか。
a. 指趾炎
b. 乾癬皮疹
c. 環軸椎亜脱臼
d. 仙腸関節強直
e. アキレス腱付着部症
正解: c
解説:
環軸椎亜脱臼は関節リウマチでよくみられる所見。
問27
リウマチ性多発筋痛症の臨床的特徴はどれか。2つ選べ。
a. CK 高値
b. 両肩の痛み
c. 側頭動脈炎
d. 圧痕浮腫を伴う滑膜炎
e. リウマトイド因子陽性
正解: b, c
解説: リウマチ性多発筋痛症の臨床的特徴は、両肩、両股関節周囲の痛みとこわばりである 。CK値は正常範囲であることが多い。側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)を合併することがあり注意が必要 。リウマトイド因子は陰性であることが一般的。
問28
関節リウマチ治療のためメトトレキサートを使用する前に実施すべき検査はどれか、3つ選べ。
a. HBs抗原検査
b. HIV抗体検査
c. 胸部単純X線検査
d. 梅毒トレポネーマ抗体検査
e. インターフェロン遊離試験
正解: a, c, e
解説:
B型肝炎ウイルス(HBs抗原検査)、C型肝炎ウイルス(HCV抗体検査)、結核(インターフェロンγ遊離試験)、胸部X線検査(肺疾患、特に間質性肺炎の有無)は必須の検査項目である 。HIV抗体検査や梅毒トレポネーマ抗体検査はMTX使用前必須の検査項目とはされていないが、必要に応じて実施される。
問29
35歳の男性、幼少時から誘因のない両足関節および両膝関節の関節血症を繰り返す、徐々に疼痛が強くなり、可動域制限も増悪してきたため受診した、両足関節および両膝関節単純X線正面像を示す、本症例について正しいのはどれか。2つ選べ。

a. 偽腫瘍を形成しない。
b. 人工足関節全置換術の適応がある。
c. 上肢関節では肘関節罹患に留意する。
d. 小関節周囲皮下に肉芽組織を形成する。
e. 血液凝固因子製剤の定期補充療法の適応がある。
正解: c, e
解説: 血友病性関節症
a:血友病性関節症では血腫が原因で偽腫瘍を形成することがある。
b:通常は保存療法や関節固定術が優先される。
c:血友病性関節症では、下肢関節だけでなく、肘関節などの上肢関節も罹患しやすい 。
d]小関節周囲皮下に肉芽組織を形成するのは関節リウマチなど。
e:血液凝固因子製剤の定期補充療法は、血友病患者の関節出血予防と治療の基本。
問30
深部静脈血栓症の予防法について誤っているのはどれか。2つ選べ。
a. 脊椎手術で術中より間欠的空気圧迫法を行う。
b. 股関節骨折で受傷後より弾性ストッキングを着用する。
c. 通常リスクの膝関節鏡視下手術で術後に薬物予防を行う。
d. 下肢ギプス固定を行う場合,可及的早期より荷重を開始する。
e. 人工膝関節全置換術で術後に下肢静脈エコーをルーチンに行う、
正解: c, e
問31
次の組合せで正しいのはどれか。
a. Freiberg病 – 第1中足骨
b. Kienböck病 – 足舟状骨
c. Köhler 病 – 状骨
d. Panner 病 – 上腕骨滑車
e. Preiser 病 – 手舟状骨
正解: e
解説: 骨壊死、骨端症
- Freiberg病は、第2〜4中足骨頭(特に第2中足骨頭)に生じる骨壊死。
- Kienböck病(キーンベック病)は、手関節の月状骨に生じる骨壊死。
- Köhler病(コーラー病)は、足の舟状骨に生じる骨端症。
- Panner病(パンナー病)は、肘関節の上腕骨小頭に生じる骨端症。
- Preiser病(プライザー病)は、手関節の手舟状骨に生じる骨壊死。
問32
Perthes 病について正しいのはどれか。3つ選べ。
a. 男女比は5:1で男児に多い
b. 好発年齢は6-7歳である
c. Drehmann 徴候が認められる
d. 手術法としては大腿骨外反骨切り術が一般的である
e. lateral pillar classificationgroup Cは予後不良である。
正解: a, b, e
解説:Perthes病
- Drehmann徴候は、股関節屈曲時に股関節の外旋を伴う徴候で、大腿骨頭すべり症で認められる特徴的な徴候。Perthes病では股関節の可動域制限(特に内旋・外転制限)が見られる。
- 手術法としては、大腿骨内反骨切り術が一般的。
- Lateral Pillar Classificationは、大腿骨頭の外側柱の高さに基づいて、主に以下の3つに分類される。
Group A: 外側柱の高さが完全に保たれている(変形がないか、ごく軽微)。予後良好。
Group B: 外側柱の高さが50%以上保たれている。予後: Group Aよりは悪いが、適切な治療により良好な結果が得られる可能性も。
Group C: 外側柱の高さが50%未満しか保たれていない、あるいは完全に破壊されている。予後: 不良。骨頭の重度な変形や亜脱臼が生じやすく、将来的に変形性股関節症へ移行するリスクが非常に高い。このグループは、積極的な治療介入(手術など)が検討されることが多い。
問33
骨系統疾患について正しいのはどれか。
a. 軟骨無形成症では三尖手を呈する。
b. Larsen 症候群の関節脱臼は予後良好である。
c. 骨形成不全症はII型コラーゲンの異常である。
d. 多発性骨端異形成症は常染色体劣性遺伝である。
e. 先天性脊椎骨端異形成症は四肢短縮型低身長症を呈する。
正解: a
解説:
- 軟骨無形成症は、長管骨の成長障害による短肢性低身長症で、三尖手(指が短く、中指と薬指の間が開く特徴的な手の形態)を呈する 。
- Larsen症候群の関節脱臼は多発性であり予後不良。
- 骨形成不全症は、I型コラーゲンの異常である。
- 多発性骨端異形成症は、常染色体優性遺伝である。
- 先天性脊椎骨端異形成症は、体幹の短縮を伴う低身長(体幹短縮型低身長症)を呈する。
問34
生下時にみられる足部変形について正しいのはどれか。2つ選べ。
a. 巨趾症は第2趾に好発する。
b. 多趾症では軸前性の割合が多い。
c. 合趾症は第4,5趾間に生じることが多い。
d. 先天性垂直距骨では距骨が内側下方に突出している。
e. 先天性外反踵足に対しては積極的にギプス矯正を行う。
正解: a, d
解説:
- 巨趾症は、足の指が肥大する先天性疾患で、第2趾に好発する。
- 多趾症は手では軸前性が多いが、足では軸後性(小指側)の割合が多い。
- 合趾症は、隣接する指が癒合した状態で、手では第3,4指間、足では第2,3趾間に生じることが多い 。
- 先天性垂直距骨は距骨が内側下方に突出する。
- 先天性外反踵足は、踵が外反し、足関節が背屈した状態の比較的軽度な変形であり、通常は徒手矯正やストレッチ、装具などで治療。
問35
1歳11か月の男児、右骨盤部の圧痛、背部痛を主訴に来院した、単純X線像を示す、最も考えられる疾患はどれか。

a. 化膿性骨髄炎
b. 多発性外骨腫
c. 內軟骨腫
d. Ewing 肉腫
e. Langerhans 細胞組織球症
正解: e
解説:Langerhans 細胞組織球症
- Langerhans細胞組織球症(LCH)は、ランゲルハンス細胞が増殖する疾患で、乳幼児から小児期の骨病変としてよく見られ、骨の透過性病変や骨破壊像を呈し、疼痛を伴うことがある。特に骨盤や脊椎の病変は珍しくない。この年齢で骨痛と骨盤の病変があれば、最も強く想起すべき疾患の一つ。
問36
遺伝性低リン血症性くる病・骨軟化症について誤っているのはどれか。
a. ビタミン D代謝の異常を通じて低リン血症を示す。
b. 遺伝形式では常染色体優性遺伝のものが最も多い。
c. 血中25(OH)D は正常である。
d. 単純X線像では管状骨骨端核の出現遅延が認められる。
e. 成人では脊柱管狭窄症や変形性関節症が問題となる。
正解: b
解説:
- 遺伝性低リン血症性くる病・骨軟化症は、FGF23の過剰作用などによりリンの再吸収が障害され、ビタミンD代謝の異常(活性型ビタミンDの産生不全)を通じて低リン血症を呈する 。
- 遺伝形式では、X連鎖優性遺伝のものが最も多い(X染色体優性遺伝性低リン血症性くる病:XLH) 。
- 血中25(OH)Dは正常であることが特徴である(ビタミンD欠乏性くる病との鑑別点) 。
- くる病と同様に、骨端核の出現遅延や骨幹端の不整などが単純X線像で認められる 。
- 成人期には、低リン血症が継続することで骨軟化症が進行し、脊柱管狭窄症や変形性関節症などの合併症が問題となる 。
問37
骨粗鬆症治療のための1日のカルシウム摂取目標量として正しいのはどれか。
a. 200mg以上
b. 400mg以上
c. 600mg以上
d. 800mg以上
e. 1000mg以上
正解: d
解説:
日本骨粗鬆症学会のガイドラインでは、骨粗鬆症の治療および予防において、1日のカルシウム摂取目標量は800mg以上とされている 。
問38
二次性に悪性腫瘍が発生するのはどれか。3つ選べ。
a. 慢性骨髄炎の瘻孔
b. 非骨化性線維腫
c. 線維性骨異形成
d. 単純性骨囊腫
e. 骨Paget 病
正解: a, c, e
解説:
- 慢性骨髄炎の瘻孔からは、扁平上皮癌が発生することがある(Marjolin潰瘍の一種)。
- 非骨化性線維腫は良性腫瘍であり、悪性化することは極めて稀。
- 線維性骨異形成からは、線維肉腫や骨肉腫などが稀に二次発生することが報告されている。
- 単純性骨嚢腫は良性病変で、悪性化はしない。
- 骨Paget病(パジェット病)からは、骨肉腫が二次発生することが知られており、特に高齢者で病変が広範囲の場合にリスクが高い。
問39
デスモイド型線維腫症について誤っているのはどれか。
a. 局所浸潤性が高い。
b. 10%に遠隔転移が生じる。
c. 経過観察が選択肢となる。
d. 良悪性中間型に分類される。
e. 硬い腫瘤として触知される。
正解: b
解説:
- デスモイド型線維腫症(Desmoid tumor)は、線維芽細胞の腫瘍性増殖で、局所浸潤性が非常に高く、広範囲に浸潤して周囲組織を破壊することがある 。この腫瘍は良性と悪性の中間型(borderline tumor)に分類される 。
- 遠隔転移は極めて稀 。
- 治療法としては、手術による広範囲切除が基本であるが、状況によっては放射線治療、薬物治療、そして積極的な経過観察も選択肢となる 。
- 触診では、硬く、周囲に固着した腫瘤として触知されることが多い 。
問40
従来は色素性絨毛結節性滑膜炎 (PVS)と呼ばれ、2013年にWHOの改訂によってびまん型腱滑膜巨細胞腫に名称が変更された疾患について正しいのはどれか。3つ選べ。
a. 関節血症として発症する。
b. 足関節に最も多く発生する。
c. ヘモジデリン沈着が特徴である。
d. 骨巨細胞種と組織学的に同一の腫瘍である。
e. 関節破壊を防ぐためには早期の切除が必要である。
正解: a, c, e
解説: びまん型腱滑膜巨細胞腫
- 関節内に発生すると、滑膜の増殖と出血傾向により**関節血症(関節内出血)**として発症することがある 。
- 発生頻度が最も高いのは膝関節であり、次いで股関節や足関節 。
- 腫瘍細胞内にヘモジデリン(鉄色素)が沈着しているのが組織学的特徴であり、MRIのT2*強調像などで低信号として描出される 。
- 進行すると関節軟骨や骨を破壊するため、関節破壊を防ぐためには早期の切除が推奨される 。
問41
15歳の男子、右環・小指の変形を主訴に受診した、6歳時より右環指に気づいていたが、最近変形が進行し右小指にも変形が出現したため来院した。右手単純X線正面像を示す、悪性化した場合に生じるのはどれか。

a. 脊索腫
b. 骨肉腫
c. 軟骨肉腫
d. Ewing 肉腫
e. 未分化多形肉腫
正解: c
解説:
小児期から存在する指の変形で、X線像で骨の突起状病変が見られる場合、多発性遺伝性外骨腫(骨軟骨腫症)が強く疑われる。骨軟骨腫は良性腫瘍であるが、稀に悪性化することがある。
- 骨軟骨腫が悪性化した場合、最も多いのは軟骨肉腫。
- 脊索腫は脊椎や頭蓋底に発生する悪性腫瘍。
- 未分化多形肉腫は軟部腫瘍。
問42
糖尿病に伴う末梢神経障害について誤っているのはどれか。
a. 運動障害は進行期に出現する。
b. 虚血性軸索障害が特徴である。
c. 遠位部優位の感覚障害を認める。
d. 発症早期にはアキレス腱反射は保たれる。
e. 治療として血糖コントロールが重要である。
正解: d
解説: 糖尿病性末梢神経障害
- 運動障害は、糖尿病性神経障害の進行期に出現することが多い。初期には感覚障害が主。
- 神経への血流障害(虚血)と代謝異常による軸索障害が特徴とされている 。
- 感覚障害は、遠位部優位(手袋靴下型)に現れるのが典型的 。
- アキレス腱反射の低下や消失は早期から認められる
問43
脳性麻痺児の痙縮の治療法として誤っているのはどれか。
a. フェノールブロック
b. ボツリヌス毒素注射
c. 選択的脊髄後根切断術
d. バクロフェン髄腔内投与
e. 免疫グロブリン静注療法
正解: e
解説: 脳性麻痺児の痙縮(Spasticity)に対する治療
- フェノールブロックは、神経を化学的に破壊し、痙縮を一時的に軽減する治療法である 。
- 選択的脊髄後根切断術(Selective Dorsal Rhizotomy: SDR)は、脊髄の後根の一部を切断することで、痙縮を引き起こす異常な神経興奮を抑制する外科的治療である 。
- バクロフェン髄腔内投与は、痙縮抑制薬であるバクロフェンを脊髄の周囲に直接投与することで、全身性の痙縮を軽減する 。
問44
ロコモ度テストで正しいものを3つ選べ。
a. ロコモ 25
b. 握力テスト
c. 歩行速度テスト
d. 2ステップテスト
e. 立ち上がりテスト
正解: a, d, e
解説:
ロコモ度テストは、運動器の機能低下(ロコモティブシンドローム)を評価するための簡易的テスト。
- ロコモ度テストには、主に以下の3つの評価項目が含まれる。
- ロコモ25 (Loco-25) :運動器の状態を自己評価するための25項目の質問票。日常生活における運動器の痛みや機能障害について尋ね、点数化することで、ロコモ度の評価に用いる。自己記入式の評価尺度。
- 2ステップテスト :下肢のバランス能力や筋力、柔軟性を評価するテスト。できる限り大きく2歩踏み出したときの歩幅を測定し、身長で割った値(2ステップ値)で評価する。
- 立ち上がりテスト :下肢の筋力、特に大腿四頭筋の筋力を評価するテスト。高さの異なる台(例えば10cm, 20cm, 30cm, 40cm)から片足または両足で立ち上がれるかを評価する。立ち上がれない高さがある場合や、片足で立ち上がれない場合にロコモと判断される。
- b. 握力テスト: 握力はフレイル(Frailty)の診断基準の一つで。
- c. 歩行速度テスト: 歩行速度は身体機能の総合的な指標であり、フレイルの診断基準には含まれる。
問45
フレイルの診断に一般的に用いられる Fried の基準で誤っているのはどれか。2つ選べ。
a. 握力の低下
b. 体重の増加
c. 疲れやすさ
d. 筋肉量の減少
e. 歩行速度の低下
正解: b, d
解説:
フレイルの診断に用いられるFriedの基準(Fried Phenotype)は、以下の5つの項目から構成される。
- 意図しない体重減少
- 握力低下
- 疲れやすさ
- 活動量低下
- 歩行速度の低下
これらの基準のうち3項目以上が該当する場合にフレイルと診断される。
問46 (採点から削除)
正解: (採点から削除)
問47
上肢挙上不全を訴える高齢者が受診した、次の原疾患のうち反転型人工肩関節置換術のもっともよい適応はどれか。
a. 腱板大断裂
b. 脊髄空洞症
c. 腋窩神経麻痺
d. 変形性肩関節症
e. 腱板断裂性肩関節症
正解: e
解説:
- 適応を考える際の重要なポイント
- 原則70歳以上の高齢者
- 保存的治療への抵抗性:
- 治療の最終手段:
- 三角筋の機能が保たれていること:RSAは三角筋の機能を活用して上肢の挙上を行うため、三角筋の機能が著しく障害されている場合は適応が慎重に検討されます。
- 画像所見:X線検査で関節症性変化が確認されること、MRI検査で腱板の状態(断裂の程度、筋の変性など)が確認されることが重要。
一昔前までは70歳以上の高齢者が適応でしたが、徐々に適応年齢が下がっている。
問48
肘関節の運動にかかわる筋について正しいのはどれか。2つ選べ。
a. 上腕三頭筋の肘伸展作用は、特に外側頭が強い。
b. 上腕二頭筋は回内位でより強い屈曲力を発揮する。
c. 腕橈骨筋は前腕中間位で強力な肘屈曲をもたらす。
d. 上腕筋は前腕回旋位にかかわらず肘関節を屈曲する。
e. 前腕回内運動では最初に円回内筋が収縮し、次いで方形回内筋が働く。
正解: c, d
解説:
- 上腕三頭筋の肘伸展作用は特に長頭が強い。
- 上腕二頭筋は、回外位で最も強い屈曲力を発揮する。回内位ではその力は低下する 。
- 前腕回内運動では、まず方形回内筋が働き、その後、より強力な収縮が必要な場合に円回内筋が働く。
問49
49歳の女性、1か月前、草むしりをした日の晩に左肘から前腕にかけて強い疼痛を自覚した、疼痛は3日ほどで消退したが、気がついたら左母指と示指に力が入らず、摘まみ動作が不自由になっていた、初診時、感覚障害はみられなかったが、左手は teardrop sign 陽性であった(図1)、初診時のMRI STIR像を示す(図2,3).症状と治療について正しいのはどれか。

a. 母指球筋は萎縮しない。
b. Froment 徴候が陽性である。
c. 可及的早期に神経剥離術を行う。
d. 肘関節屈曲により症状が増悪する。
e. 手関節掌側部に Tinel 徴候がみられる。
正解: a
解説: 前骨間神経麻痺
- 前骨間神経麻痺では、母指と示指のDIP関節(遠位指節間関節)とIP関節(母指の)の屈曲が障害される。母指球筋は正中神経の別の枝(反回枝)に支配されるため、前骨間神経麻痺では母指球筋は萎縮しない。
- Froment徴候は、尺骨神経麻痺で母指内転筋が麻痺した際に、代償的に長母指屈筋が使われることで生じる徴候
- 前骨間神経麻痺は、保存的治療(安静、経過観察)で改善することが多い。
問50
ボタン穴変形について正しいのはどれか。3つ選べ。
a. DIP関節が屈曲する。
b. PIP 関節が屈曲する。
c. 伸筋腱中央索が緊張する。
d. 伸筋腱側索が掌側に転位する。
e. 関節リウマチによるPIP関節滑膜炎が原因となる。
正解: b, d, e
解説: ボタン穴変形(Boutonnière deformity)
- 伸筋腱中央索は、PIP関節の上で断裂または伸長し、その機能が失われる。中央索がは機能不全になる。
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